基礎有機化学: (2) たゆたえども沈まず-有機化学あれこれ-
よくアクセスがあるものをまとめておきました。右バーのカテゴリ別も参照ください。

レポート・実験データ等のまとめ
・研究室に貼っておくと便利な表などをあつめてみた(現在も随時更新追加中)
・検索・計算に使える化学サイトをあつめてみた
・特殊記号の出し方・ショートカットキーまとめ
・MS WORDショートカットや特殊アルファベットの入力法まとめ
・Powerpointのショートカットキー
・出版社ごとのオープンアクセス化費用をまとめてみた(有機合成化学向け)
・ネットコンテンツを参考文献に挙げる話
・情報ソースはウィキペディア、な論文の話
・タダで読めるけど・・・-オープンジャーナルのあやしい世界
・最近のOLのはなし

材料化学・自然化学・疑似化学
・ボーイング787の窓の秘密とクロミック材料の話
・アメフラシの紫汁の謎
・タコが光ってもいいじゃなイカ!-青い毒タコ・ヒョウモンダコ科の秘密-
・やけど虫の毒と抗がん活性
・世界一大きい花の臭いの話
・竜の血の赤、虫の赤
・撤回された天然竜血分子が全合成で確かめられた話
・はじけるキャンディ・ドンパッチの話
・危険なDHMO? SDS(MSDS)の話
・水を脱水した話
・高校生が高価な薬分子を格安で作った、という話
・人工分子は天然に存在しないのか―抗がん剤分解物は妖精さんだった話―
・創薬分子が天然から採れた!!と思ったら・・・な話

有機合成化学実験
・Swern酸化の利点
・光延"反転"の話
・実験、爆発:やってはいけない組み合わせ
・モレキュラーシーブスは塩基か酸性か
・TBAFにモレシな話
・モレキュラーシーブスの乾燥法で収率が変わった話
・原料の不純物で反応が行ったり行かなかったりした話

大学講義の初級有機化学
・フィッシャー投影式をジグザグ式に変換する方法
・ニューマン投影式の理解の仕方
・R/S表記やE/Z表記など

2015年04月23日

カルボニル類の極性転換①:カルボニル炭素を求核種にする話

男らしくとか女らしくとかどうでもええんじゃああああああ!!!!(_・ω・)_バァン


冒頭からいったい何に怒ってるんだかわかりませんが、別に「○○は○○らしく」とか正直どうでもいいですね。どこぞのなんちゃらパートナーシップなんちゃらとかで家庭が滅びるとか自然に反するとかなんだとか、はたまた女装やら男装やらはなんやかんやと言ってる人いますけど、別に毒ガスを吐いて回ってるわけじゃあるまいし、別にそうしたいんだからそうすりゃええじゃないですかね。推奨するのもなんか違うとは思いますけど、それを認めないとか否定に走るとか異端扱いするとか嘲笑目的で取り上げるとか、ずいぶん偏狭やなあと思う次第。

でそれはそれとして。高等生物の人間でなくもっとシンプルな系、有機分子だってその極性に起因する「普段はこう」という通常の反応性とは全く反対の性質を持つこともできます。分子だってたまには「○○らしく」ないこともしたくなるもんです。

このように分子の性質、極性を逆転させることを極性転換(umpolung)と呼び、通常の有機化学ではできない結合生成を可能にするなど、分子変換をより柔軟かつ幅広く行えるようにする優れた合成戦略として知られています。今回はその中で、重要な反応性官能基であるカルボニル類の極性転換についてまとめてみました。

なおこのumpolungという用語、元は当然ドイツ語(反転)からきてるんですが、ドイツ語だと名詞の最初は必ず大文字にする決まり。でもこの場合完全に化学英語化してて小文字にしないといけないのでなんか気分的にもやっとする私。
ちなみに女性名詞(die Umpolung)。

umpolung_intro.jpg

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posted by 樹 at 10:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 基礎有機化学 | 更新情報をチェックする

2015年02月17日

保護基としての重水素:1次同位体効果

同じ原子番号に属していながら、中性子組成の違いから「同じ原子だけど違う」というものがあります。それらを同位体と言い、たとえばコバルト原子でも59Coは安定に存在できますが、60Coは放射性同位体として放射線をまき散らしながらニッケルへと崩壊していきます。

放射線をまき散らすようなやつは大変に困りますが、そうでない同位体もたくさんあります。重水素(Deutrium, D)は水素(Hydrogen, H)の安定同位体として化学的にメジャーな物であり、中性子を余計に一つ持っています。その結果、質量とスピン量子数で水素との違いが出てきます。

ちなみに表にあるとおり、重水素のスピン量子数は1なので1H NMRでは観測されません。これを利用して重水素交換による水酸基ピークの確認や重水素トラップ実験でのピーク消失の確認にも用いられます。一方13C NMRでは、普段デカップリングで消しているC-Hカップリングとは違うためC-Dカップリングが現れるので注意(CDCl3が3重線になっているのはこのため)。

同位体効果比較表.jpg

たとえば炭素―重水素の換算質量は炭素―水素のそれの2倍にもなり、大幅に違いが出てきます。E=hνで与えられる結合の振動エネルギーはこの換算質量が影響し、重い重水素の振動は水素のそれと比べて小さくなり、ゼロ点エネルギーが増大することになります。まあ簡単に言ってしまえば「重い原子ほど振動しないから結合が切れにくい」ということになります。その結果、同じ原子番号の物を置いたとしても、その同位体とで反応の進行度合いに差が出てきます。

同位体効果式.jpg

なお、同位体効果には反応に直接関与する1次同位体効果と、直接関与しない2次同位体効果があるのですがよく利用されるのは1次の方なので2次は今回割愛。1次での例を挙げるとE2脱離反応はその典型となります。以下のハロゲンの脱離反応では反応速度定数の比であるk(H)/k(D)が7近くにもなり、大幅な反応速度の差が見られます。これは重水素化によってC-D結合開裂がC-Hより起こりにくくなったことに起因します。

同位体効果反応1.jpg

この重水素の同位体効果は反応の律速過程を調査したりと、反応解析に用いられることが多いのですが、これを合成反応での保護基として活用した例をいくつか紹介します。

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posted by 樹 at 13:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 基礎有機化学 | 更新情報をチェックする

2015年01月22日

糖(アルドヘキソース)の覚え方

期末試験の季節らしいですよ?奥さん(誰

最近すっかり学部生向けエントリーを書いてない気がします。もっとも書くことがないのだけど。
どうだったか全然覚えてないのですが、糖の話は生化学にも通じるのでその種類やらなんやらを覚えさせられたような気もします。代表的な糖と言えばグルコースに代表されるアルドヘキソース類。なお砂糖のような2糖類は今回無視します(ぉ

アルドヘキソース.jpg

アルドヘキソースは上に示した通り全部で8種類あり、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロースと命名されています。正直立体化学とかを覚えるのはグルコース、マンノース、ガラクトースくらいで大体事足りる気がするのですが、それにしてもOHの向きがどの糖がどうだったっけ、という風になりがちです。なんせOHは糖1つにつき5個もあるし・・・。

という風にグルコースってどんなんだっけ?ガラクトースってどう描くんだっけ?とお困りのあなたに向けた糖のわかりやすい覚え方を紹介しようと思います。

ちなみに今回はフィッシャー投影式を中心にして解説しますので、フィッシャー投影式←→ジグザグ式への変換法がわからないという方は下のエントリを参照ください。

フィッシャー投影式をジグザグ式に変換する方法


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2014年03月06日

カルボニルのα位ヒドロキシ化

カルボニル化合物は分子変換を行うのに有用なもので、特にケト型―エノール型への互変異性を利用したカルボニルα位の官能基化は有機合成を学ぶ上でも基本的な反応のひとつです。これらはカルボニルα位に新しい炭素―炭素結合を構築する上でも重要ですが、なにも増やせるのは炭素-炭素結合に限りません。高度に酸素官能基化された分子を合成する際には水酸基のような極性官能基が導入できるのが望ましいので、簡単に生成できるエノラートを使ってα位に水酸基を入れることができれば便利なわけです。

というわけで今回はケトン等カルボニルのエノラート、エノールエーテルを使ってα位に水酸基を導入する方法をまとめてみました。

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2013年02月14日

漢字の読み方の話

バレンタインデーネタ? (ヾノ・∀・`)ナイナイ

卒論修論シーズンも佳境ですね。もう発表が終わっている所もあるかと思います。英語で書く場合は別として、日本語で文章を書く際には漢字の間違いに気を配らないといけません。
試薬の合成に使うのは「調整」ではなく「調製」。電子「吸引性」ではなく「求引性」。ちゃんとなっていますか?間違ってたら差し替え時にちゃんと直しておきましょう。

さて文章と違い、口頭発表を行う際には化学でのフォーマルな言い回しでの説明をすることは当然として、文章書きでの漢字の「書き」と同じように、化学用語の漢字の「読み」に気をつける必要が出てきます。日本語の学習が難しいとされる一因でもありますが漢字には数多くの読みがあり、同じ漢字でも単語ごとで違う読み方をすることはザラです。そのため思い込みで読んでいるのが実は間違った読み方だったりすることもあるわけです。どこぞの国の元総理は漢字読み間違いとかずいぶんとくだらない理由でフルボッコにされてましたが、いずれにしても正しい読み方を知っておくことはとても重要です(化学に限らず)。

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posted by 樹 at 10:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 基礎有機化学 | 更新情報をチェックする