2015年07月29日

あなたはどれ派?立体化学の表記法色々

有機化学において分子を表記する場合、実線「―」、二重線「=」、三重線「≡」を使って結合を表記しますが、場合によってはそれ以外に立体化学というものを表す必要が出てきます。炭素原子でいえば飽和炭素はsp3の四面体構造を取るので、2辺を平面に取ると、残り2つの結合手は手前か奥に伸びていることになります。

くさび例.jpg

その表記方法として現在一般に用いられているのがくさび型で、黒塗りの高級車に追突してしまうくさびは紙面上側、つまり自分に向かって伸びている結合を、点線でできたくさびは紙面の後ろに向かって伸びている結合を表しています。

くさび見方.jpg

と言っても実際に一義的にくさびで表せ、と決まっているわけではありません。実際にはいくつかの流派にもにたタイプがあり、ある種派閥みたいなものにもなっています。

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2015年04月25日

カルボニル類の極性転換A:ヘテロ原子を求電子剤にする話

前回の続きー。

・カルボニル類の極性転換の話@:カルボニル炭素を求核種にする話

さて、前回はカルボニルを求核剤として反応を逆転させる手法を見てきたわけですが、カルボニル類は通常求電子部位として働くものです。ただし、求電子部位と言っても求核剤が反応する部位は酸素などのヘテロ原子ではなく、根元の炭素原子が求電子部位になるのがごく一般的な有機化学。これを逆転させる、すなわち、炭素ではなくヘテロ原子部位に求核剤を付加させる前回と違った極性転換手段はないのでしょうか。

umpolung_intro2 addition.jpg

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2015年04月23日

カルボニル類の極性転換@:カルボニル炭素を求核種にする話

男らしくとか女らしくとかどうでもええんじゃああああああ!!!!(_・ω・)_バァン


冒頭からいったい何に怒ってるんだかわかりませんが、別に「○○は○○らしく」とか正直どうでもいいですね。どこぞのなんちゃらパートナーシップなんちゃらとかで家庭が滅びるとか自然に反するとかなんだとか、はたまた女装やら男装やらはなんやかんやと言ってる人いますけど、別に毒ガスを吐いて回ってるわけじゃあるまいし、別にそうしたいんだからそうすりゃええじゃないですかね。推奨するのもなんか違うとは思いますけど、それを認めないとか否定に走るとか異端扱いするとか嘲笑目的で取り上げるとか、ずいぶん偏狭やなあと思う次第。

でそれはそれとして。高等生物の人間でなくもっとシンプルな系、有機分子だってその極性に起因する「普段はこう」という通常の反応性とは全く反対の性質を持つこともできます。分子だってたまには「○○らしく」ないこともしたくなるもんです。

このように分子の性質、極性を逆転させることを極性転換(umpolung)と呼び、通常の有機化学ではできない結合生成を可能にするなど、分子変換をより柔軟かつ幅広く行えるようにする優れた合成戦略として知られています。今回はその中で、重要な反応性官能基であるカルボニル類の極性転換についてまとめてみました。

なおこのumpolungという用語、元は当然ドイツ語(反転)からきてるんですが、ドイツ語だと名詞の最初は必ず大文字にする決まり。でもこの場合完全に化学英語化してて小文字にしないといけないのでなんか気分的にもやっとする私。
ちなみに女性名詞(die Umpolung)。

umpolung_intro.jpg

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2015年02月17日

保護基としての重水素:1次同位体効果

同じ原子番号に属していながら、中性子組成の違いから「同じ原子だけど違う」というものがあります。それらを同位体と言い、たとえばコバルト原子でも59Coは安定に存在できますが、60Coは放射性同位体として放射線をまき散らしながらニッケルへと崩壊していきます。

放射線をまき散らすようなやつは大変に困りますが、そうでない同位体もたくさんあります。重水素(Deutrium, D)は水素(Hydrogen, H)の安定同位体として化学的にメジャーな物であり、中性子を余計に一つ持っています。その結果、質量とスピン量子数で水素との違いが出てきます。

ちなみに表にあるとおり、重水素のスピン量子数は1なので1H NMRでは観測されません。これを利用して重水素交換による水酸基ピークの確認や重水素トラップ実験でのピーク消失の確認にも用いられます。一方13C NMRでは、普段デカップリングで消しているC-Hカップリングとは違うためC-Dカップリングが現れるので注意(CDCl3が3重線になっているのはこのため)。

同位体効果比較表.jpg

たとえば炭素―重水素の換算質量は炭素―水素のそれの2倍にもなり、大幅に違いが出てきます。E=hνで与えられる結合の振動エネルギーはこの換算質量が影響し、重い重水素の振動は水素のそれと比べて小さくなり、ゼロ点エネルギーが増大することになります。まあ簡単に言ってしまえば「重い原子ほど振動しないから結合が切れにくい」ということになります。その結果、同じ原子番号の物を置いたとしても、その同位体とで反応の進行度合いに差が出てきます。

同位体効果式.jpg

なお、同位体効果には反応に直接関与する1次同位体効果と、直接関与しない2次同位体効果があるのですがよく利用されるのは1次の方なので2次は今回割愛。1次での例を挙げるとE2脱離反応はその典型となります。以下のハロゲンの脱離反応では反応速度定数の比であるk(H)/k(D)が7近くにもなり、大幅な反応速度の差が見られます。これは重水素化によってC-D結合開裂がC-Hより起こりにくくなったことに起因します。

同位体効果反応1.jpg

この重水素の同位体効果は反応の律速過程を調査したりと、反応解析に用いられることが多いのですが、これを合成反応での保護基として活用した例をいくつか紹介します。

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2015年01月22日

糖(アルドヘキソース)の覚え方

期末試験の季節らしいですよ?奥さん(誰

最近すっかり学部生向けエントリーを書いてない気がします。もっとも書くことがないのだけど。
どうだったか全然覚えてないのですが、糖の話は生化学にも通じるのでその種類やらなんやらを覚えさせられたような気もします。代表的な糖と言えばグルコースに代表されるアルドヘキソース類。なお砂糖のような2糖類は今回無視します(ぉ

アルドヘキソース.jpg

アルドヘキソースは上に示した通り全部で8種類あり、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロースと命名されています。正直立体化学とかを覚えるのはグルコース、マンノース、ガラクトースくらいで大体事足りる気がするのですが、それにしてもOHの向きがどの糖がどうだったっけ、という風になりがちです。なんせOHは糖1つにつき5個もあるし・・・。

という風にグルコースってどんなんだっけ?ガラクトースってどう描くんだっけ?とお困りのあなたに向けた糖のわかりやすい覚え方を紹介しようと思います。

ちなみに今回はフィッシャー投影式を中心にして解説しますので、フィッシャー投影式←→ジグザグ式への変換法がわからないという方は下のエントリを参照ください。

フィッシャー投影式をジグザグ式に変換する方法


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