有機化学: (5) たゆたえども沈まず-有機化学あれこれ-
よくアクセスがあるものをまとめておきました。右バーのカテゴリ別も参照ください。

レポート・実験データ等のまとめ
・研究室に貼っておくと便利な表などをあつめてみた(現在も随時更新追加中)
・検索・計算に使える化学サイトをあつめてみた
・特殊記号の出し方・ショートカットキーまとめ
・MS WORDショートカットや特殊アルファベットの入力法まとめ
・Powerpointのショートカットキー
・出版社ごとのオープンアクセス化費用をまとめてみた(有機合成化学向け)
・ネットコンテンツを参考文献に挙げる話
・情報ソースはウィキペディア、な論文の話
・タダで読めるけど・・・-オープンジャーナルのあやしい世界
・最近のOLのはなし

材料化学・自然化学・疑似化学
・ボーイング787の窓の秘密とクロミック材料の話
・アメフラシの紫汁の謎
・タコが光ってもいいじゃなイカ!-青い毒タコ・ヒョウモンダコ科の秘密-
・やけど虫の毒と抗がん活性
・世界一大きい花の臭いの話
・竜の血の赤、虫の赤
・撤回された天然竜血分子が全合成で確かめられた話
・はじけるキャンディ・ドンパッチの話
・危険なDHMO? SDS(MSDS)の話
・水を脱水した話
・高校生が高価な薬分子を格安で作った、という話
・人工分子は天然に存在しないのか―抗がん剤分解物は妖精さんだった話―
・創薬分子が天然から採れた!!と思ったら・・・な話

有機合成化学実験
・Swern酸化の利点
・光延"反転"の話
・実験、爆発:やってはいけない組み合わせ
・モレキュラーシーブスは塩基か酸性か
・TBAFにモレシな話
・モレキュラーシーブスの乾燥法で収率が変わった話
・原料の不純物で反応が行ったり行かなかったりした話

大学講義の初級有機化学
・フィッシャー投影式をジグザグ式に変換する方法
・ニューマン投影式の理解の仕方
・R/S表記やE/Z表記など

2013年11月10日

キノコから毒ガス?の話

秋ですねえ。キノコのおいしい季節になりました。
キノコと言えば某ホクトのCMが話題のようですが苦情で中止になったとか。

ホクトのきのこCM、苦情で打切り(livedoor news)

キノコ(意味深)。

ところでキノコと言えば食用と同時に毒としても有名なヤツですね。ベニテングダケやカエンタケみたいないかにも毒キノコってやつもいれば、非常に紛らわしくてプロでも間違うようなものもあります。
しかしこれらはほとんどが食して毒性が発現するものばかり(カエンタケは触るだけでも重症になる特殊タイプ)。胞子をガンガン飛ばしている割に毒ガスやら甘い息やらを吐くキノコは聞いたことがありません。ゲームやアニメにはよく出てきますけどね。まあガスをばらまいて遠く離れた獲物を仕留めたところでそもそも取りに行けないし、危険を回避する目的だとしてもそんな広域にまでばらまくのは労力に見合わないことを考えるとまあいなくて当然かなとは思います。

じゃあ、毒ガスを出すキノコがいないのかと言えばそうとも言えません。

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posted by 樹 at 19:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 有機化学 | 更新情報をチェックする

2013年09月13日

CO2(二酸化炭素)を使った有機合成

製品を作るにしてもでも何にしても、それを作るための材料は豊富にあってかつ安価なものである方が望ましいものです。ましてやそれが処理しにくかったり厄介者扱いされているようなものである場合、そのうまい利用法・処理法を開発することができれば、使い物にならないゴミ山は一瞬にして宝の山へと変化します。

CO2、二酸化炭素も人間自身呼吸するたびに生産しているガスであり、大気中に山のように存在しています。最近では温暖化の話もあって何かと厄介者扱い。ですが炭素を1個単位で追加できるC1化合物であり、類似化合物であるものの毒性が高く取り扱いが大変な一酸化炭素と違って、引火性もなく窒息に気を付けるくらいのもんなので合成素子として魅力的なものの一つです。ただし、工業的にも幅広く使われている反応性の高い一酸化炭素と比べて反応性はかなり落ちます。とはいえ構造としてはO=C=Oというカルボニルが二つくっついたような形をしているので、求核剤が反応すればカルボン酸となり、C1ユニットを、もっとも酸化段階の高い形で導入することができるわけです。安価かつエコな合成材料となるわけですから何とかしてうまく利用する方法はないか、そういう取り組みはさらに強まっています。最近はさらに窒素分子の利用法の開発も実現され始めてきていますが、今回はCO2を材料にした合成を、最近の例を中心に簡単に紹介します。


schemeNuCO2.jpg
s_NuCO2.JPG

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2013年06月27日

どっちやねん!な話ー創薬分子絶対構造決定の顛末

生物活性を持つ有機分子は山のようにありますが、同じ分子でも同じように効果があるわけではありません。天然か人工かは全く関係ないですが、同じように見えて、鏡に映した像に相当する分子、つまり同じ手は手でも左手と右手のような関係にある分子では、生体・人体に与える影響は全く異なる場合が多く見られます。たとえば甘味料としてお馴染みのアスパルテームでも鏡像分子はまるで甘くないと言われています。ほんとかどうかは舐めたことないので知りませんけど。

アスパルテーム.jpg


同じことは当然薬の分子についても起こります。
Mefloquineは合成創薬化合物で、抗マラリア薬として現在も現役です。創薬化合物としては古参で、耐性菌が出ちゃってるくらい古参です。構造はこれまた古くから知られている天然の抗マラリア分子であるキニーネを模倣したものになっています。(Mefloquineにはthreo体とerythro体がありますが、今回erythro体の話しかしませんので以降はerythro-mefloquineを"Mefloquine"として表記します)

実はこのMefloquineは神経系に結構な副作用が出ることが昔から知られていました。マラリアで死ぬよりはましですから用法用量を守って正しくお使いください、なわけですが、最近になってこの副作用が光学活性なマイナス体のみに表れるもので、プラス体にはない、という報告がされたそうです。


mefloquine 0 構造と活性.jpg


元々Mefloquineはラセミ体として使われていたようですが、そうとわかれば光学活性なものを用意すればよいわけです。ですが、このプラスだとかマイナスだとかいうのは分子の比旋光度の符号のことなので、副作用が少ない方を今後選択的に合成していくに当たってはどういう絶対立体化学なのか(R/Sで示される絶対立体化学)をちゃんと実験的に決めないといけません。

ところがこのmefloquineの絶対立体化学決定の歴史をまとめてみると・・・・

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posted by 樹 at 15:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 有機化学 | 更新情報をチェックする

2013年05月13日

人工分子は天然に存在しないのか―抗がん剤分解物は妖精さんだった話―

天然vs人工というのは昔から根深いもので、「天然=体にいい」「人工=害毒」と決めつける風潮はなかなか消えません。極度の天然志向が高じて「人工薬・農薬は害悪である」とまで言ってしまうのも結構います(それをビジネスにしてるのも多いから困る)。

有機分子の話でいうと、天然に存在する分子と全く同じものを作ってくればそれは人工だろうと天然のそれと同等なわけで、植物等天然由来で賄ったらどえらく希少&高額になってるのを合成化学的に解決している例は山ほどあります。逆に天然に山ほどあるもしくは合成が費用対効果でペイしない場合には天然のものを市場供給に使うことになります、モルヒネなんかは現状それです。同じものであれば合成か天然かはコストやニーズによるのであって効能に差はありません。

しかし困るのが、それが「天然に、自然に存在しないもの」である場合。こうなると比較のしようがありません。薬害うんぬんの報道もあってこれで人工=害といったレッテルが張られているきらいがあります。中には「天然に存在しない物質は、天然に存在しないという理由のみで既に生体に有害な物質である。」やら「人工物質が環境を破壊し、肉体をも破壊していく」というずいぶんアレな天然原理主義的な思想もあったりします。曰く「天然にないものは自然界で出会うことがないため、対応する処理機構がないので副作用が避けられない」だの「不自然な分子なので自然の摂理に反している」だのだそうです。そんなもん別に天然のモノだって出会わなきゃ処理する術知らないじゃないすかー。なら、なんでフグ毒で死ぬんですかねっと。

また「人工甘味料アスパルテームで精子激減、日本薬学会で報告」とかいう話が最近出回ってるようですが、その報告をしたという助教授(てか"助"教授って時点でもう信憑性ない)、調べてみたら3年前に名誉教授になられているようなんですけど、なんで今"助"教授やってるんですかねえ?てか職員リストに既にいないし。で、調べたら2003年4月の日刊ゲンダイあたりがソースらしいです、古っ!そしてソースが日刊ゲンダイって時点でもうアレ。どうやら現在はアメリカ陰謀説とセットになって陰謀論者定番のネタと化しているようですが、元の発表がどんなのだったか気になるところです、内容の曲解な気もするし。いずれにしても10年も前の話をさも最新の研究のように見せかけてずっと引っ張ってるあたり、支持する(というか害の煽りに使える)ような報告が他にないんでしょうかね。論文挙げとけばだいぶ印象も違うのに、出てないのかな。


それはさておき、有機化合物に関して振り返ると、

天然から発見された分子を人工的に合成(全合成・半合成)

というものは山のようにありますが、

人工的に合成したモノが天然から発見

というパターンはなかなか聞きません。これが「人工分子=自然に存在しない」という印象を生み出している大きな理由ですが、本当に人工的に作り出した分子・薬品・農薬は絶対的に非天然・人工的なものなのでしょうか。

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posted by 樹 at 10:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 有機化学 | 更新情報をチェックする

2013年04月04日

博士論文のネット公開化と引用の話

年度始めから博士論文の話をするのもあれですが(いやむしろした方がいいのか)、4/1から博士論文のデジタルデータがインターネットでも公開されることになったそうです。

・学位規則の一部を改正する省令の施行について(文科省, 2013, Mar, 31 accessed)
国内博士論文の収集について(国立国会図書館, 2013, April accessed)

卒論・修論と違ってD論は国会図書館に収蔵公開される、ちゃんと論文の参考文献にも挙げていい著作物ですので他人に見られるという意味では今までと変わりはないし、デジタルデータも国会図書館で以前から見れたわけですが、ネットでアクセスできるという利便性の劇的向上からして、これまで以上にD論の閲覧が増えるのではないでしょうか。
となるとこれまで以上によその人に読まれることを考えてちゃんと書かないといけないのかもしれません。

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posted by 樹 at 10:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 有機化学 | 更新情報をチェックする