2013年03月10日

ジオトロピー転位の話

シグマトロピー転位は協奏的にπ電子を介してσ結合が移動する反応で、Claisen転位やCope転位、Wittig転位などが有名です。なお、シグマトロピー(sigmatropy)とはσ結合(sigma)が移動する(tropos:ギリシャ語で「移る」)という意味で、反応機構を別に表しているものではありませんが、ペリ環状反応のことを普通は意味します。

1 sigmatropic cope.jpg

こんな風に矢印で書くときれいに一周した後に単結合(と不飽和結合)が違う場所に移動しており、捨てになるものもないし見た目もきれいな反応のひとつです。

と、ここで疑問。上のように円を描いて矢印が一周し、結合が移動するのがシグマトロピー転位なわけですが、


(・ω・)
-----------------
     (・ω・)

こんな配置の二つの置換基が一度に

       三・ω・)ヒュン
  ----------------
ヒュン(・ω・三 

ってな具合に位置が入れ替わってしまう反応はないものなのでしょうか。ありそうでなくて、あったら便利そうな反応ですが、それが今回紹介するジオトロピー転位(dyotropic rearrangement)です。

2 dyotropic.jpg
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2012年12月20日

Sterically-hindered

有機合成は立体障害の化学と言ってもいいくらい、立体障害は様々な場面で考える必要が出てきます。たとえばSN2反応において、4置換炭素上で進行しないのは、三つの置換基による反応点の遮蔽ですし、それはネオペンチル位(4置換炭素の隣の炭素)になっても強く現れ、反応性を著しく落とします。
※但し、ごく一部の例では4置換炭素でもSN2が進行
(教科書を変える(かもしれない)SN2反応の話)


neopentyl.jpg


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posted by 樹 at 10:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 有機化学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月22日

モレキュラーシーブスは脱水剤か貯水剤か

また何をわけわからんことを、なタイトルですがそんな話。まあ脱水剤も貯水剤も見方が変わってるだけで結局同じこと言ってるんですけどw
だいぶ前にモレキュラーシーブス(モレシ)の話を載せました。通常脱水剤として多用されているモレシも実は酸や塩基として働くなど色々悪さ(?)をするという話です。

モレキュラーシーブスは塩基か酸性か

またモレシを添加することによる、脱水+αを利用した新たな反応の開発も行われています。

MS4A存在下でのDMSOの特性に着目した無触媒反応の開発
歩仁内広平、折山剛 有合化 2012, 1041-1053


上に載せたような副次的な作用はあるものの、やはりモレシは強力な脱水剤としての利用が圧倒的で、特に反応系内で逐次発生する水や各種有機溶媒の除去に利用されています。ヘタに蒸留するよりも活性化モレシを放り込んだ方が水分が少ないという結果もあります。

Drying of Organic Solvents: Quantitative Evaluation of the Efficiency of Several Desiccants
D. Bradley G. Williams and Michelle Lawton
JOC 2010, 75, 8351–8354


しかしモレシがトラップした水等はゼオライト空孔内に閉じ込められただけなので分解されているわけではありません。ということは捕まえた分子がチョイと顔をのぞかせて逆反応を起こしてもよさそうなもんです。そんなことあっては困りますが、なぜかモレシを入れたことで無水中なのに基質が加水分解した例がありました。
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2012年11月10日

論文査読にどれくらいかかる?

やあみなさん! Reject & Reject、俺でーす!(゚∀。)
こんなのってないよ!
次回よりブログタイトル「たゆたえども沈まず」改め「もうゴールしていいよね」が始まりますのでこうご期待!

そんなことはさておき、一球入魂ならぬ一報入魂で投稿した論文が採択されるかどうか、その審査結果通知は非常に待ち遠しいものがあります。が、よく審査結果がなしのつぶてでまるで返ってこないとかそういった話も聞きますし、余りに長いと放置されてるんじゃないのかと思ったり。個別の話はボス等から聞こえては来ても全体の傾向等はなかなか見えてこないものです。その論文査読に関して面白い論文があったので紹介しようとおもいます。

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2012年08月01日

2量体天然物の話

複雑な構造を有していることの多い天然有機化合物ですが、繰り返し構造のないものばかりではありません。同じ基本骨格が2つ3つと繰り返しで出来ているものも多く知られています。一か所でつながったものから、大環状ラクトンを形成する形で2量化しているもの、2量化した後に片側だけ骨格変換して非対称化したものなど色々あります。あの有名なモルヒネにも2量化したbismorphineというものが知られていたりするのです。
また、ニガヨモギに含まれ、アブサンパスティスと言った香草系リキュールの苦味成分でもあるabsinthinという巨大なテルペンも[4+2]のDiels-Alder反応によって2量化して出来ています。
わぁい濃いお酒、管理人濃いお酒大好き(酒の話はもういい

というわけで今回は2量化した天然物について。
bismorphine A.jpg
absinthin.jpg
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posted by 樹 at 18:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 有機化学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする