2017年11月21日

出ないはずの?エノラートの話 その2:高周期14族元素のエノラート

↓前回の続きー

出ないはずの?エノラートの話 その1:Bridgehead enolates

前回はねじれすぎて出なそうな橋頭位エノラートの話でした。
今回はちょっと変わった典型元素エノラートのケースです。

enolate 00 基礎sila.jpg

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2017年11月15日

出ないはずの?エノラートの話 その1:Bridgehead enolates

カルボニルは有機合成でも基本にして重要な化学であり、そのなかでもケト・エノール互変異性の話は必ず頭の中に入れておかないといけない話です。通常のカルボニルはケトンでもアルデヒドでもエノール型は不安定でケト型を取っています。そんなカルボニルに塩基を作用させると、カルボニル部位とのケト・エノール互変異性ならびに立体電子効果によって酸性度の上がったα位の水素が引き抜かれ、エノラートが発生します。エノラートは炭素にアニオンが局在したケト型カルバニオンとOに負電荷が局在したいわゆるエノラート型の2つの状態の共鳴構造によって負電荷が非局在化することで安定化しており、炭素―炭素結合形成反応として最も基本的な反応のひとつであるアルドール反応に重要な反応活性種です。
ところで関係ないけどカルバニオンなの?カルボアニオンなの?最近後者の方よく見る気がするけど(なお英語だと"カーブアナイオン")。今回は管理者権限によりカルバニオンに統一します(ぉ

enolate 00 基礎.jpg

しかしエノラートもなんでも出せるわけではなく、分子の構造などによってはその発生が困難な場合も存在します。そんななかで、はた目には「え、そんなとこエノラート出せないでしょ?」となるような場所でエノラートを発生させて合成に利用した例を紹介します。

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2017年05月22日

Ugi多成分連結反応でポリマーを合成する話

有機合成の反応をやってると大体1反応につき1成分しかくっつけてなかったり(同じやつを何か所にもつけることはあるけど)するので、いろんなものを一発でくっつけて合成できると大変効率的でかつカッコいいのです。そういった反応は多成分連結反応(multicomponent (coupling) reaction)と呼ばれ、クエンチしないone-potでの反応(不飽和ケトンに対する1,4-付加→生じたエノラートを使ってアルドール反応)もこの範疇に含まれます。個人的には英語のmulticomponent reactionだと「多成分反応」であって連結が入ってないじゃん( ・᷄ὢ・᷅ )って思うんですけどね。

そんな多成分反応の中でも一度に4成分を連結してしまうものがあり、Ugi反応(Ugi-4成分連結反応、Ugi-4CC)として知られています。反応機構を段階的に書くと

@アミンとアルデヒドでイミンを形成
Aイミンにイソシアニドが刺さる
Bカルボン酸が付加
Cアミノ基が巻き込んできてトランスアミド化

1 Ugi_mechanism.jpg

となりますが、厳密な反応機構では真ん中のカッコで描いたような3中心型の状態を経て一気に進行すると言われ、生成物はα-アシルアミノ化されたアミドとなります。生成物のどの部分が原料に由来するかは図で色分けしてあるのでよく見といてください。ちなみに1成分減ってアミンなしの3成分だけで行った場合にはPasserini反応と呼ばれ、得られるのはα-アシルオキシアミドです。

反応に関与する4成分を混ぜるだけで基本他の試薬を必要としないため、簡便に複雑なアミノ酸構造を構築できる高効率多成分連結反応として多くの利用例があります。天然物の全合成にも用いられており、有名どころでは福山-菅らによるエクテナサイジン743の第一世代合成の序盤に利用されています。

2 Ugi_Kan-ET.jpg

Total Synthesis of Ecteinascidin 743
Kan, T.; Fukuyama, T. et al.
JACS 2002, 124, 6552


さてそんなUgi反応、多成分を決まった位置に組み込めることと、出来上がる構造がα-アミノ酸であることから、ジペプチドの合成が可能なのですが、これをポリペプチド、つまり高分子の合成反応として使うことができれば面白い材料が出来上がりそうです。高分子重合というとなんとなくラジカル連鎖反応を思い浮かべますが、反応機構を見るとすでに4成分だけで反応が完結してしまっています。

果たしてUgi反応を使って高分子を合成するためにはどうしたらいいのでしょうか。

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2017年03月20日

提出構造と分子量が違ってた天然物の話

異論が多すぎて怒られる気がしますが、天然物化学は昔から大まかに物取りと合成の2つがあります(ケミカルバイオロジーとかは今回の話と関係ないのでスルー)。天然資源から抗がん活性とか抗菌活性といった生物活性を指標にしたりして有用な成分を見出し、精製・単離し、新しい天然有機化合物を見つけてくるのがいわゆる物取り研究者の役割。ごくわずかにしか取れないような成分を様々な合成手法を駆使してその分子構造を決定していきます。で、それを構造既知なものからどんどん人工的に合成を進めていって構造を確実なものにする、もしくは提案された構造が間違っていることを示して本当の分子構造を明らかにするのが合成屋の役割なわけです。

で、合成屋が死屍累々を乗り越え合成した合成天然物分子と、同じく物取りの人が死屍累々を越えてとってきた天然サンプルを比較することで、構造が合ってるかを見ていくのですが、一番メインとなるのは合成品とのNMRでのデータの比較です。大概の場合は構造異性体なのでひたすらに立体化学を変えたり側鎖や官能基の場所を変えたりすることでどうにかなります(簡単とは言っていない)。
が、この際、考えてみたらNMR以外のデータ(比旋光度は別として)はかなりスルーされている場合が多いような気がします。特に質量分析の場合は全合成しても話に出てこないし、単離論文と異なる分析手法で行っていることもよくある話(装置の問題もあるけど)。なんとなく「出て当たり前」みたいな感覚なのかもしれません。しかし、この質量分析が決定打となって構造改訂が行われることもごくたまにあります。

というわけで質量分析の値が構造と違っていたために起こった構造改訂の話を。

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2016年11月15日

最近のアミド縮合法の話

有機合成のための反応は数あれど、最も基本的かつ古典的な合成反応のひとつはカルボン酸とアルコール・アミンからのエステル・アミド合成・脱水縮合反応と言えるかと思います。単純かつ古典的な反応ですが、身の回りにはペプチドやらなんやらとエステル、アミド分子がゴロゴロ転がっているため、創薬分子をはじめその合成の需要は極めて高いのは今も変わりません。カルボン酸とアルコールもしくはアミンを混ぜるだけでもエステルやアミドは出来ますが、加熱と過剰量の反応剤を使用しなければならないなど、効率は基本よろしくありません。そういった背景から、古くからあるアシルハライドに始まり、DCC、HATUなどなど、年を追うごとに高活性、安定、精製容易な新しい縮合剤が誕生しています。以前もボロン酸を利用した脱水縮合法を紹介しました(モレキュラーシーブスは脱水剤か貯水剤か)。他にも向山法、山口法、椎名法がありますが、これらはアミド化ではなくラクトン化、エステル化がメインに使われています。見た目複雑な反応剤ですが基本的にどれもやってることは同じで、カルボン酸から脱離能の高い部位をまず導入し、そこにアミンやアルコールをぶつけることで生成物を得ています。

縮合剤一般機構.jpg

縮合剤いろいろ.jpg

Oxymaってなんか響きがいいよね、「おきしま!」って書くとなんか今にもアニメ化しそう(何

それはさておき、今でも進化を続ける縮合剤に見られるように、縮合反応の開拓は基礎合成化学にしていまだ重要な研究分野でもあります。そんな縮合反応の中から、カルボン酸・エステルとアミンによるアミド合成について、最近の論文をいくつか挙げてみたいと思います。

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posted by 樹 at 09:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | 有機化学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする