2017年07月24日

お酒センサーの話

今年はジンがブームらしいっすよ?京都の季の美をはじめとして最近はジャパニーズ・ジンいっぱい出てるし、サ〇トリーもジン前面に売り出すらしいっすよヾ(*´∀`*)ノ
どうもウィスキーがブームで枯渇した上に、売れるようなレベルにまで熟成させるのに時間がかかりすぎるというのも一因にあるらしいですが、もともとジン好きだから無問題ヾ(*´∀`*)ノ

個人的なお勧めジャパニーズ・ジンは、ロックまたはストレートで楽しむならバレルドジンの『クラフトジン・岡山』、夏らしくトニックかソーダ割でガバガバ行くのなら鹿児島の『WA・BI・GIN(和美人)』ですね。京都の『季の美』?あれいつでも呑めるからいいやってんでまだ飲んでないので知らね(ぉ

そんなジンの話はさておき、お酒と言っても同じ種類、例えばウィスキー1つとってもトリスから響までピンキリですので熟成年だの素材だのでも味が違うわけですけど、苦みだの甘さだのといった味覚は人によっても感じ方が違うため絶対的な評価というものが非常に難しいものでもあります。ですが、そんなある意味あやふやなものを絶対的な指標で評価しようという試みも世の中にはあります。

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2017年03月03日

論文原稿や研究発表の最近の傾向の話

論文は基本的にpeer reviewというシステムがとられていて、誰かに審査されてその判断をもとにエディターが修正指示や掲載の可否を判断します。なので出した論文がそのまま通ることは事実上ありません。

この論文審査はエディターが大勢の研究者の中から利益相反のない、且つその分野に詳しそうな人を査読者として選定します。指名された側も自分が出した時に査読をしてもらっているわけだからそうそう無下に断ることもなく引き受けることが多いわけですが、この査読、文献読んでその言ってることが正しいのか独自にバックグラウンドをチェック、またデータ自体もあってるのかと精査したりなどなど結構な時間を取られます。それも年に1回とかならともかく、月に数回ではきかないレベルでこの査読依頼がやってくることも多く、自分の研究に関係ないことで消費される時間が半端ではなくなります。2015年に査読に費やされた時間は延べ6300万時間とまで言われており、大量の査読が押し寄せて卓越査読者化している人も多かったりしますが、そんな査読は、完全なるボランティアです、タダ働きです。そんなこんなで本人時間取れないから海外ラボでも学生に査読丸投げしてるとこ多いような気がしますがアレだめなんちゃうの?

The Global Burden of Journal Peer Review in the Biomedical Literature: Strong Imbalance in the Collective Enterprise
M. Kovanis et al.
PLOS ONE DOI: 10.1371/journal.pone.0166387



近年ではOpen Access論文誌(OA誌)の激増などもあり、発行される論文の数は加速度的に増加しています。その割合は年6%以上とも言われ、科学誌だけで2014年にpeer reviewを受けて発行された論文は34000以上、2003年には130万だった論文総数が、わずか10年後の2013年には倍近い240万報にまで膨れ上がっているという調査もあります。当たり前ですが、発行される論文数が増えればその分査読を受ける(合否判定前段階の)論文も増えるわけです、例えば一律で受理率を20%とした場合、34000報の5倍の数の論文が審査に回されているわけです。こうなるともうやってられないし低レベル論文誌ほど原稿読んで得るものがなくなる(時間の無駄)となると査読者もそもそも現れなくなるわけで、エディターとしても大変のようです。

という、完全に研究者の善意だけで回っていた査読システムが崩壊しつつある近年です。これに関して色々解決するにはどうしたらいいかとかいう議論も上がっており、『報酬を出せ』という意見が一番多いしまあ当然そうなるわけです。ただそれやると報酬を渡すためにまた口座管理登録とか論文誌側がそういうのしなきゃいけなくなるし、何より常日頃からくるスパムメールポスドク志願メールよろしく報奨金目当てで『アイアム卓越査読者、プリース査読回して』というメールが某国やら某国やらと膨大な量エディターに寄せられてきそうでなかなか難しそうです。最近のNatureのコメントには『査読したらポイントがたまって、論文をOA化できるようにしたらどうか』という意見が出されています。

Peer review: Award bonus points to motivate reviewers (correspondence)
D. Gurwitz
Nature 542, 414


なお、「査読をしたら自分がOA論文出すときに使える値引きクーポンをだす」というパターンはもうすでにやられていて、Moleculesなどを擁するOA誌会社の一つであるMDPIは、査読をすると今度投稿するときに使えるOA化料金値引きクーポンコードがもらえます。有効期間と値引き料はまちまちなので(なんでなんだろ、よこしてくる原稿の厚さとか?)、たまたま出そうと思ってたらラッキーってなるでしょうけどそうでなければ使えないよなあと。

さて、そんな査読システムの話は置いといて、これだけ論文が激増する一方で紙面やこっちが読める数も限られるわけですから採択される報数自体はそんな大幅には増えません。ということは論文採択のための競争が激化しているわけです。科学論文であればもちろん研究成果というか研究結果ベースで採否は決まるはずですが、判断する方も所詮人間ですし、採択の理由にも「読者が興味を示すか」というのもあるわけですから、そのためにエディターへのカバーレターでのアピールに加えて、Abstractや論文本体での『俺すごいんやで』アピールとそう見せるためのストーリーも重要になってきます。ところで私自身前面に出たがらないコミュ障だし、ウルトラ俺様論文読んでるとこっちが恥ずかしくなるくらいなので結果ベースのアピールとか文章構成にしかする気がないんですけど、それもそれでだめな書き方なんだろうなあと(そんなんだからうだつが上がらないのか?それ以前の問題か?)

無論、おんなじ結果でも伝え方(原稿の書き方)次第で印象が180度違うのは当たり前なのでわかっちゃいるんですが、かなりの小手先感もしてしまうのも事実。そういった最近の論文原稿自体の傾向についての論説がACS Catalysis誌で出されました。

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2016年12月28日

論文誌1年分まとめ読む話

みなさん仕事納めましたか?え?そもそも納めないでそのまま新年だって?
いや別に特に書くことないんですけど年末なのでかなり短くちょっとだけ。

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2016年12月07日

高校生が高価な薬分子を格安で作った、という話

(2016/12/08 ちょいちょい修正)

とあるニュースが先月末あたりから海外を中心に話題となりました。

「大炎上男」が「1錠9万円」に吊り上げたHIV薬、オーストラリアの高校生が約230円で作り出すことに成功(engadget日本版)
米の「最も憎まれた男」の鼻を明かした? 豪の高校生たち (BBC Japan)
Australian students recreate Martin Shkreli price-hike drug in school lab (The Guardian)
Students make $750 drug cheaply with Open Source Malaria team (The University of Sydney)


オーストラリアのシドニーグラマー校の高校生らが、pyrimethamine (商標名Daraprim)を合成、市価11万ドル相当の量をわずか20ドル程度で作ったというニュースです。

マラリアのみならずHIV治療薬として現在も使われているpyrimethamine自体は1953年上市という半世紀以上前の創薬分子なので当然化合物特許もオリジナルの製造特許も切れているわけですが、なぜこれが今更話題になるのでしょう。実はTuring Pharmaceuticalsという会社がこれの米国内独占販売権を取得、そのアメリカでの薬価を$13.50から$750.00という50倍強にも釣り上げたことがそもそもの発端にあります。

この製薬会社は当時のCEO、Martin Shkreli(シャリと読むらしい)が大半を出資して設立したものなのですが、この人、フォーブス誌による「30歳以下の金融業界の成功者30人」にも選ばれたことのある超やり手のヘッジファンドマネージャーで製薬を中心に投資展開を行っている様子。ただし製薬・創薬に関するバックグラウンドは全くなく、投資など以外の面ではまるでダメ。アメリカ版ホリエモン(+村上ファンド)と言われてることからもわかる通りかなり人間性に問題があるようで、「マイナーな疾病の特効薬(シャーガス病薬も)」といった患者の足元を見て金儲けすることに躊躇も反省もなく、他人を徹底的に見下して侮辱する態度は政治家からも猛反発を浴び、世界的に大炎上しました。

“米国版ホリエモン”マーティン・シャリの素性とは (Wedge)
「バイオ坊や」のテレビ出演が大ひんしゅくを買い、バイオ株が総崩れ (market hack)

で、そんな中くっそ高くなったpyrimethamineを高校生がわずか20ドルで合成したというニュースが出てきたもんだからアンチ・Shkreliにしてみりゃナイスなフルボッコネタが上がったといえるでしょう、あとアンチ創薬企業とか。もっとも当のShkreliはこれに対し「人件費や設備費用は?」「物理化学者をただで働かせられるなんて知らなかった」「研究室の設備を無料で使えるのなら、なぜ自分は設備を購入しなければならなかったんだろうな」「先生たちが命令すれば、彼らはただで働いてくれるんだな」「どんな薬でも少ない量なら低価格で作れるよ」「薬の合成を学ぶだけではイノベーションにならない」と徹底的にバカにしてるので大して効いてなさそう (一方対外的なyoutubeでは祝福コメント出してるらしいので使い分けちゃんとしてるなあと)。

薬価50倍つり上げの元CEO、薬の生成に成功した高校生をからかう(AFP)

ただ、開発経費は年々高騰しており今では一つの新しい薬を生み出すのに数千億円かかるとまで言われています。それらの費用を回収しなければ会社としてやっていけないわけですから、原価が格安で作れたから企業は暴利をむさぼっている、という理屈はおかしいわけでそういう意味ではShkreliの言っていることは間違ってはないわけです。もっとも「pyrimethamineは大昔の分子だからとうに開発投資金は回収済」+「おまえ金出して販売権買っただけだから設備費以外苦労してないだろ」という意味で説得力はないのですけど。あと段階的でもなくいきなり50倍に値上げするとか真面目に稼ぐ気あんの?

さて、そんなpyrimethamine(daraprim)ですが、このシドニーの高校生らが一体どうやって格安でpyrimethamineを合成したのかについてはどこのメディアも触れていません。ちなみにpyrimethamineの構造式はこちら↓

1 daraprim structure.jpg


安く簡単に作れ!って言われると結構悩ましい構造式にも見えますが、さてどうやって合成したのでしょうか。

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2016年09月27日

2016年ACS社説から〜元素分析・基礎化学の死・筋トレ〜

(2016年9月30日:本庶先生インタビューリンクと、Janis Louieのムキムキ映像を追加)

気が早いですが2016年ももうすぐ終わりですね、進捗どうですか?(ブーメラン

今年もいろいろな革新的な論文が出たりでなかったりしましたね。
個人的には全合成では
Ryanodolの15工程全合成(Science 2016, 353, 912)
Pallambins C, D 11工程全合成(JACS 2016, 138, 7536)
タミフル60分合成(OL 2016 18, 3426)

構造有機だと
安定ゲルマニウムビニリデン(Nat. Chem. 2016, ASAP)
2個入りポリイン・3個入りロタキサン(JACS 2016, 138,1366; JACS ASAP)
どえらく単純な分子で水素ガス、酸素ガスを使って光応答性をスイッチングするオルトキノン (ACIE 2016, 55, 7432, chem-stationスポットライトリサーチ)

反応だと
遷移金属なしの光照射だけでアリールハライドをボリル化するやつ
(Chem. Sci. 2016,7, 3676; JACS 2016, 138, 2985)
アリールアセチレンと硫黄(S8)だけでアリールチオフェン作っちゃったやつ
(JACS 2016, 138, 10351)
ニトロシルラジカルがトリプトファン選択的にぶっ刺さる遷移金属フリーClick型反応
(JACS 2016, 138, 10798)

でしょうか。なんとなく思いつくままに挙げましたけど。なんか下期の割と最近のばっかし挙げてるから上期のやつ覚えてないだけじゃないか説あるけど気にしない気にしない。

で、今回は化学論文それ自体ではなくて、その論文誌の社説、特に最近のアメリカ化学会(ACS)論文誌の2016年社説で気になったものを簡単にまとめて取りあげてみました。

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posted by 樹 at 09:00 | Comment(2) | TrackBack(0) | 有機化学雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする