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大学講義の初級有機化学
・フィッシャー投影式をジグザグ式に変換する方法
・ニューマン投影式の理解の仕方
・R/S表記やE/Z表記など

2021年10月02日

GrammarlyとDeepLだけで論文だしてみた話

まだ生きてたの?このブログ(呆
というわけで>6か月振りの更新です。論文出してたり某誌で連載が始まったりプレスにリリースしたりしてる程度にはとりあえず生きてます。まだ沈んでないよー、たぶん。

さてその論文投稿、英語論文原稿の校閲は、これまで外部業者に出してきたのですが、金かかるのは置いといて、これ意外と困るんですよ。Submit前に校閲出して修正→submitするわけですが、出したやつがそのまま通る事なんてそうそうありません。このあとrejectされたりrejectされたりmajor revisionで無茶振りされたりするわけです。追加実験で本文原稿が増えたり追加項目で話の流れが変わったりすることもそうですが、別の論文誌、特に速報誌Communicationsから「フルペーパーとして出せ」と言われると、原稿も大幅に増強しないといけなくなります。となると、最初に投げた校閲が結局形を成さなくなる場合も。それとは別に個人的な事情として、金の出しどころが難しいタイミングだったので(なんで使途がやけに厳密に決まるんですかねこういうの)、外部英文校閲に出さなくてもどうにかならんものか、という状態になっておりました。

そんな中、英文のお手軽かつ(そこそこ)ちゃんとした翻訳を出してくれる機械学習型翻訳DeepLがそれなりに前から話題になっていたこと、そして機械学習型英文校閲サービスGrammarlyの評判も上がってきたこともあり、この二つを駆使して論文を書いてみることにしました。


Grammarly

Grammarlyは機械学習、ディープラーニングを用いてスペルミスや文法、冠詞などのチェックし、指摘してくれるサービスで、webブラウザ上で操作するもののほかにもアプリもあります。文法チェックだけでなく剽窃チェック機能もあり。タダでも使うことはできるのですが、機能は大幅に縮小されます。というわけで根幹となる英文章の文法に関わる事なので、私は課金してPremiumプラン(月額$12、年単位払いだともっと安い)を使っています、年払いで。公金で払えないのが癪ですが、査読コメントのチェックでもこのGrammarly Proは大変重宝するので私費でも十分元は取れます。癪ですが。

さてGrammarlyですが、これがめっちゃ便利。みるみるきれいな文章になっていきます。元の文が汚いからよくわかります。スペルミスだけならwordでもやってくれますが、Aとかtheとかそういう冠詞についても指摘を入れてくれますし、熟語、例えば"refer in"となっている物を"refer to"に直すよう指摘してくれたりもするので、この点がGrammarly最大の長所です。剽窃についてはあんまし使ってないんだけど、気にするのであればiThenticateを使う方が確実なような気も。もちろんインスタントにチェックするのならアリです。

また、MS Wordのアドオンを入れることでWord上でも稼働できます。いちいちアプリを立ち上げるのも本文からコピペするのもかったるいので、word上でできるようになるアドオンのおかげで論文校正などが大変便利になります。ただし、Wordを閉じる際に非常に時間がかかるようになってしまう欠点あり、これが意外とうっとおしい・・・。なお、ブラウザ上でもGrammarlyをオンにすることができますが、これは非常にうっとおしいのでやめときましょう。投稿時のwebフォーム上で校閲かけられる点ではいいのかもしれませんが、正直Grammarly上で用意しておいてそれをwebにコピペする方が賢明。

論文につかうのだけに課金はちょっと・・・という人でもおすすめなのが査読での利用。現代化学2021年10月号でも話題になった査読コメントですが、正直毎度毎度査読のコメントは結構(変につっかかるのとか意味不明な文になってないかどうか)普通の人なら気にするところですがこんなものに毎度毎度外部校正投げてたら守秘義務以前に破産します。そんな毎週襲い掛かる査読のコメントも、このGrammarlyを使えばとってもきれいなコメントが出来上がります(※なおきれいになってもrejectはrejectの模様)。そういう意味でも論文書きよりも査読コメント校正での利用頻度の方が圧倒的なので、課金する価値は大いにあります。逆にいうと、査読する立場でもないし四六時中つかうわけでもなく論文執筆に使いたいだけ、というのならその月だけ課金する方がよいかもしれません。


そんなGrammarlyですが、以下が気になる点というか欠点。

受動態に対してやけに敵意を持っている。
・”Intramolecular”とか”stereoselective”とかすら「難しい単語だから使うな」という風に文章全体を評価してくるため、この単語が入るだけでその文章の他のエラーがわからなくなる。
・明らかに違う意味の単語を修正候補に挙げてくる(特に専門用語, “reaction”を違う意味での”反応”と解釈して別の単語に変えろと言ってきたり)。
・論文で見たことのない言い回しをsuggestしてくる。

分野にも依りますが論文は基本的に受動態で文章が書かれる場合も多いです。が、それらすべてに対して「この文章受動態になってるやで」とエラーが付いて回ります。文章設定をプロフェッショナルとかそういうのにしても大して変わりません。おかげで他のエラーがあまり目立たなくなったり・・・。また、論文英語や化学英語で絶対に見ない言い回しを提案してくることも割とあります。それを考えると、Grammarlyをちゃんと使うには、やっぱりある程度論文を書いたことがある人が使う方がよいかと思いますし、学生が使う場合でも絶対に上の人に見てもらわないと結局わけのわからない論文が出来上がることになってしまいます。ただ、英語レポートとかを課された際には協力なツールになるでしょう。



さて英作文は終わりましたが、果たしてそれがちゃんとした目的の意味の文章になっているかどうかは別問題。そこで機械学習翻訳のDeepLを使います。

DeepL

DeepLはディープラーニングをベースにした機械翻訳で、Google翻訳よりも自然な訳で、且つ正確な翻訳がされることで爆発的に広まっていきました。Web版とアプリ版があり、アプリを入れれば翻訳したい文章を選択して[ctrl]+[C]×2で簡単に翻訳が出てくるという超の付くお手軽さも魅力。

実際使ってみると、たまに変な訳が返ってくることもありますが、他のオンライン翻訳とは比較にならない精度です。科学の学術論文的では複雑な言い回しは避けねばならないということを考えると、DeepLの精度が高すぎて「DeepLで変な訳を返されるような文章はそもそも文章がおかしい」という風に考えた方が賢明なレベルに。というわけで、DeepLで変な訳になって返ってきた場合には文章そのものを書き直すようにしましょう。

一方、英作文に慣れていない場合には「DeepLで和文を英文出力」すればいいじゃんとなるわけで、それはそれでアリです。が、あまり論文英語の体裁として出力されてこないので、和文→英文を出して論文英語っぽく直したうえで、再度英文→和文でチェックするのが確実かと思います。

なお、DeepLはWeb版ではなく使いやすいようにアプリを入れましたが、有料のProにはしませんでした。情報が洩れるって?どーせChemRxivに先に出すからへーきへーき(※ちゃんとした対応をする場合には課金してProにしましょう、てか年間まとめ払いだと月750円だし使用頻度高いから普通に課金していいかも)



さてそのDeepL、以下の点がへんなところもとい欠点。

・なぜか1文を飛ばしたり特定パラグラフの訳が出力されないことがある。
(やけに2番目の文章がすっとばされてる印象)
・元の英単語が全然違う単語として訳されることがたまにある。
間をすっ飛ばして文章全体のものすごい意訳を返してくることがある

各文章の翻訳じゃなくて「だいたいこんな感じ」という意訳を返してくる機能自体はすごいのですが、文章翻訳道具としてはよろしくないです。こういったことがあるので、DeepLに関してはできればパラグラフごとに放り込むのではなく、1~2文ごとにチェックを入れる形が確実です。めんどくさいですけど。というか、同じ文章にもかかわらずパラグラフ丸ごと放り込んだ時と1文だけを入れた時とで訳文が劇的に変化するので、本当に1文章ずつ入れるのが確実です。


さて、こんな感じで完成した論文原稿。Let’s Submit!(ポチー
そして返ってきた査読コメント!



Reviewer 1「(このパラグラフ)ちょっと意味わかんない」


Σ(´°ロ°`)


教訓
文章・文法がよくなったところで、学術的にちゃんとしているかどうかは別問題

まあでも「英文校閲に出してこい」とは言われなかったし文章そのものには特に言われなかったので、成功と言えるのではないでしょうか。ところで外部英文校閲に出してもなお査読で「native speakerに見てもらってから出せ」って言われるのはなんでなんですかね。アメリカ人ですら中国日本系の名前だと同じ事いわれるらしいからそういったアレじゃないのかって思ったりしてますけど。

なお、だいぶ古くなって入手が難しくなってきましたが、論文英語における各表現の時に用いられる単語や使うシチュエーションなどがまとまった化学同人の本があるので、GrammarlyやDeepLに頼りっぱなしになるだけでなく、こうした書籍も活用していきましょう。

第2版科学英語のセンスを磨く-オリジナルペーパーに見られる表現-(化学同人)

posted by 樹 at 09:45| Comment(0) | 化学とネット・PC | 更新情報をチェックする
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