ってくらい金ねーですよ。具体的に言うと設備に出せる金が全然ないですよもう。なんでもうパーツ作ってないとかいうレベルの骨董品の数々をだましだまし使い続けていかないといけないんですかねもう。こういう現状があるからどこの大学も毒饅頭食わされてるんですよ分かって頂戴。
で、研究費は研究費でなんか月をぶっ壊す的な名前の超「選択と集中」をぶちかますというひどいやつが流れてきてもうね。お金は寂しがり屋とはよく言いますがほんとにいろんなところ干上がってますよ。その上お金もらったらもらったで使い勝手はひどいし、昼食の時間はともかくcoffee breakの時間までいちいち差し引いた勤務時間書かされたりとかその他諸々なんなんですかねもう。報告書もめんどくさいし( ・᷄ὢ・᷅ )
ちなみに科研費も「若手A落ちたしそろそろ若手B二回目行っとこか~」と思ったら突然降って湧いた学位取得年数での申請制限にギリギリ引っかかり、出せなくなった嫌がらせを受けた世代ですc(⌒っ.ω.)っ人生再設計第一世代って言うらしいよ!人生最初からやり直せって意味かな?
氷河期世代は「人生再設計第一世代」、政府検討会議で新たな呼称 地方への人材移動も検討 (2019.4.12, キャリコネニュース)
そんなこんなで既存のお金集め法での限界がやばいことになっているなか、なんと有機化学論文研究所の所長さんが新たな資金調達手法としてクラウドファンディングに挑戦し、見事1日で目標を達成しました!
有機化学初のクラウドファンディング挑戦します!皆様にお願いがあります!(有機化学論文研究所)
アカデミア有機化学研究でのクラウドファンディングが登場!(Chem-Station)
academist (学術系クラウドファンディング・プラットフォーム)
アカデミア用クラウドファンディングサイトが出来たというのも大きいですね。僕も参加して支援金を投じたついでに目に入った乳児アレルギープロジェクトにもお金を投げました。カードで払えるのがいいですね。
業界全体の盛り上がり(というか泥船からの脱出?)もあって今後ますます注目のクラウドファンディングですが、やはり見てると科研費や民間助成以上に「達成できる感」が出せないと難しそうな印象を持ちました。そしてそのための根拠を、closedなこれまでの審査ではなく完全にオープンにするので、プレゼン公開資料をちゃんと考えないとみんなに、それもやられてしまう可能性がこれまで以上に高いでしょう(FAQにも書いてあった)。となると現実的にはすでに3割以上は達成しているネタを使ってクラウドファンディングするのが実際のところかなと。あと、達成できなかった場合に投資元大衆がクレーマー化しないだろうなと特に最近のいろんな流れをみてて心配。
ただそういうことを差し引いても、科研費基盤C・若手クラスは金額的に無理だとしても、その金額よりはるかに少ない、それでいて科研費よりも採択率の低い、単年助成で、使い道と経理が科研費より制限強い、申請資料内容も体裁もバラバラな大半の民間助成への申請に労力を割くよりも、費用対効果は圧倒的に高いのではと強く思います(と民間助成申請書を書きながら)。
何より一番でかいのが、このクラウドファンディングって基本的に寄付金ですよね?ということは科研費をはじめとした基金・補助金と異なり、使い勝手が圧倒的にいいのです。そもそも基金だの補助金だので使用用途を限定されること自体がクソと言ってしまえばそれまでなのですが、現状制度において使い勝手がよい民間助成クラス弱のまとまった研究費を得ることが出来る新たな媒体と考えられるわけです。これは非常に大きなメリットとなります。
ただコミュ障にはつらい
さて現実に戻ります(ぉ
いくらクラウドファンディングが流行ったところで、これまでの研究費申請方法が急になくなるわけがありません。毎年の科研費シーズンもですが、今の季節だと学振のなど「研究費下さい何でもしますから」的申請書は相変わらず書かされ続けるわけです。
そして申請書はその研究内容などの文章力、図などのプレゼン力に加えて、書類自体の見やすさも大きく影響します。そもそも読んで審査するのも人間なので、どんなにいい内容でも読みづらい申請書だったら間違いなくネガティブに働きます。
こうした申請書の体裁やフォントなどの話も本になってたりしますし、これも研究室ごとで継承されていることかと思います。が、意外とフォントや行間を変えて見やすさを比較した例がなさげだったので、学振申請のシーズンでもあることですしまとめてみることにしました。なお通るかどうかは知らないし、スタイルは人によって違うのであくまで参考程度に思っておいてください。
↑小さい頃はこんな感じでラファエル派だったのに、いまや支持する方が逆になっちゃったなあ。
金ないとやってらんねえよ。
というわけで申請書の見栄えを比較していきます。公平になるように、文章、ハイライトする箇所、フォントの大きさ(11pt)をすべて同じにします。変更するのは「フォント」、「行間」のみです。なおテンプレにしたのはなんとなく最初に引っ張り出したのが新学術公募研究だったのでそれを使いました。深い意味はないです。
というわけで、まずは元になる文章がこちら。
行間設定:なし
フォント:和文字:MS明朝, 英数字:century
ハイライト方法:太字
うん、読む気が起こらないですね!
(文章の中身に触れる気はない)
このままでは話にならないので、多少見やすく行設定を変えます。
行間設定:1.15, 「段落後に間隔を追加」
フォント:和文字:MS明朝, 英数字:century
ハイライト方法:太字
だいぶマシになりました。それでもハイライト部分はなかなか目立ちません。そもそも太字にしてしまうと割と文字がぼやけるので目立ちはしますが読みにくくなってしまいます。あと行間ですが1.0だと狭いので最低でも1.15はあけた方がいいです。同じ行間にしてるはずなのに行間がバラバラになっている場合、範囲を選択し、行間をいじるタブの中から[行間のオプション]-[1ページの行数を指定時に文字を行グリッド線に合わせる]のチェックを外せば直ります。
次はハイライト方法を変えます。
行間設定:1.15, 「段落後に間隔を追加」
フォント:和文字:MS明朝, 英数字:century
ハイライト方法:和文字:MSゴシック, 英数字:arial
ハイライトした部分が、本文とはっきり区別できるようになりました。このように普段が明朝、ハイライトがゴシックという人が割と多いのではないかと思います。科研費にしても学振にしても大量の申請書を見ることになるのでいちいち一言一句最初から目を通すのはしんどいです。なのでハイライトした部分だけ読んでいっても大体やろうとすることとそのメリットが分かるようにしておかないといけません。この辺は内容以前の問題となります。ただし、だからと言ってひたすらにハイライトすると結局読みづらいので注意。またゴシックを太字にしてしまうと文字がにじんだ感じになってやっぱり読みづらいのでやらない方がよさげ。
さてここまでは割と多いやり方かと思いますが、ここからちょっと新しくしてみます。
Windows10は2017年秋の一斉アップデート以降、「UDデジタル教科書体」というフォントが使えるようになっています。Mac?しらね。
この教科書体ですが、教育現場、ならびに弱視、読み書き障害者からのフィードバックをもとに、読みやすさ、理解しやすさを追求したフォントとなっており、非常に見やすいのが特徴です。NHK Eテレ「デザインあ」で見て以降、個人的にこのフォントがマイブームになっており、積極的にこれを使ってみようというムーブメントが個人的に起きています。(4/17:弱視等々の背景の話を追加)
モリサワの「UDデジタル教科書体」が「Windows 10 Fall Creators Update」に採用
教育現場の要望に応えたユニバーサルデザイン対応フォント (窓の社)
株式会社モリサワ
というわけで、ハイライトの設定をこのフォントに変えます。UDデジタル教科書体にはN、NKとNPがありますが、一番文字の横幅が広いNPを使いましょう。またそれぞれにRとBのフォント(NP-R, NP-B)がありますが、これは普通の文字(R)と太字(B)の違いです。言い換えれば、今まで普通に使っていた太字ボタン(もしくはctrl+[b])はこのフォントでは意味を成しません。(R)の方はちょっと太くなるけど言うほど目立たないので太字(B)を使った方がいいです。
行間設定:1.15, 「段落後に間隔を追加」
フォント:和文字:MS明朝, 英数字:century
ハイライト方法:UD デジタル 教科書体 NP-B
見よこのインパクト。ハイライト部分がはっきりと読める!読めるぞ!(CV:ムスカ大佐)
これでだいぶ読ませようとする場所が明確になりました。さすが教科書体の名は伊達じゃない。ただし、見ての通りだいぶ濃い文字なので、今まで以上にハイライト箇所を絞らないと大変見づらくなるのも事実です。
まあでも見やすいからいいんじゃね?どうせなら全部教科書体にして太字細字で区別しちゃえ(∩´∀`)∩
行間設定:1.15, 「段落後に間隔を追加」
フォント:UD デジタル 教科書体 NP-R
ハイライト方法:UD デジタル 教科書体 NP-B
うーんこの
却ってハイライトが見づらくなってしまいました(;´Д`)
このように教科書体はあくまで平文をどばーっと並べた時に読みやすい、理解しやすいフォントなので、ハイライトを混ぜたり図を駆使したりする短文的な用途にはあまり向いていないようです。確かに明朝よりは圧倒的に読みやすく、文章を読んでいくのには適しているのですが、大量の申請書で全文読んでられないのでハイライト部分を渡り歩いて読んでいく傾向の強い場合には向いていないかもという気がします。もし全文教科書体の場合には下線ハイライトの方が目立つかも。ちなみに、通常を教科書体にしてハイライト文字を先ほどのMSゴシックにしてみても、全然ハイライトになりません。むしろ通常教科書体の方が濃く見えるレベル。ただこの辺は使いどころな気がするので、少なくとも全文を明朝で通すくらいならこっちにした方が圧倒的に良いです。
さて、教科書体が読みやすい分だいぶ濃ゆいフォントなのでちょっと行間増やして薄めてみます。
行間設定:1.5, 「段落後に間隔を追加」
フォント:UD デジタル 教科書体 NP-R
ハイライト方法:UD デジタル 教科書体 NP-B
あらだいぶ見やすい。
このように、特に教科書体は行間を幅広く取っておくと読みやすさの威力が増します。ここまで広くすると申請書としてだいぶ書くことがなくなる気もしますが、日本の科研費はいかに細かいことを書かないかがキモなので(アメリカのNIHグラントとか基盤A以上はそうもいかないだろうけど)、小プロジェクトくらいならこれくらい空けといても十分な気もします。もしくは1.15行間で段落を増やし、「段落後に間隔を追加」して、長文を読ませる印象を減らしましょう。
ちなみに、いままでフォントサイズを11ptにしてきましたが、これでさらにフォントを12ptにすると
だいぶまた文字の圧が上がるので個人的にはおなか一杯です(;´Д`)
さて、ここまでフォントを割と絞って使ってきましたが、より見やすくするためにやっていることとして、「項目、属性ごとにフォントを変える」ことがあります。要するに見出し、本文、図やscheme見出しでそれぞれ違うフォントを使って、ビジュアル的にこの項目!というのをはっきりさせています。とはいっても視認性の高いフォントは限られるので違う種類のゴシック体で乗り切ります。
行間設定:1.15, 「段落後に間隔を追加」
フォント:和文字:MS明朝, 英数字:century
ハイライト方法:和文字:UD デジタル 教科書体 NP-B, 本文の(Scheme 1)指示:arial
見出し:MS ゴシック
Scheme見出し:HG丸ゴシックM-PRO
行間設定:1.5にした場合
こんな風になります。正直SchemeやFigureの見出しに圧力は大していらないので、「他と違うフォント(項目)だな」というのさえ分からせられればいいかと思います。
最後に「教科書体濃すぎ(・ε・`)」という貴方に、タイトルを教科書体、本文をゴシックでハイライトしたものを載せます。
行間設定:1.15, 「段落後に間隔を追加」
フォント:和文字:MS 明朝, 英数字:century
ハイライト方法:和文字:MS ゴシック, 英文字:arial
見出し:UD デジタル 教科書体 NP-B
Scheme見出し:HG丸ゴシックM-PRO
あんまり圧が高くないのでアレですが、見出しが定型文ではなく「●●の研究」みたいに端的に内容を表すようになっている場合には見出しを教科書体にするのがいいかもしれません。良い子は最後のポップ体は真似しちゃだめだぞ!
とまあこんな風にフォントで色々見てきたわけですが、こういうしちめんどくさいことになると、「日本のシステムはクソ!」という出羽守的なのも出てきそうですが、フォントでグラント落ちた話は別に日本に限った話でも何でもなく、たびたび取り上げられます。あと意外と海外のグラントはフォント指定が厳しく、それ以外は問答無用で切られるといったこともあるようなので、フリーダムにフォント選べる日本はまだましかもしれません(でも指定フォントがある場合、大概読みづらい明朝フォントになるのはクソ)。英文だとarial, helveticaがデフォ。
・Grant application rejected over choice of font (Nature)
・Which Font Looks Best in a Figure?
J. M. Buriak
Chem. Mater. 2016, 28, 689.
・図に最適なフォントは何か? (Chem-Station)
以上、学振シーズンということで(?)、フォントと行間を変えて同じ文章を比較してみました。もちろんわかりやすい内容にすることの方が重要なのですが、読む気が起こらないような原稿だと大変読むほうもnegativeな気持ちになるのでこういうのも大事ですよ。