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2018年09月08日

勝手に投稿したことをなかったことにしようとした話

そろそろ年末ですね(気が早い

というわけで去年に引き続き、「2018年の論文オブザイヤー」をそろそろ考えていかないといけないなあと思ったり。ちなみにすでに候補が100報超えてて大変なことになっているのは内緒。

2017年有機合成化学論文オブザイヤーを勝手に選んでみた

で、去年のやつのオチは「論文撤回オブザイヤー」だったので今年もそれにしようかと思い候補を探していたのですが(下衆)、あまりにもあんまりな撤回モノがあり、とても1コーナーで収まるような話ではなかったので、短めではありますが独立して書いてみようと思います。


2018Retraction01.png



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論文本体
A Recycling-Free Nanocatalyst System: The Stabilization of In Situ-Reduced Noble Metal Nanoparticles on Silicone Nanofilaments via a Mussel-Inspired Approach
ACS Catal. 2017, 7, 2412

疑義の通知
Expression of Concern for “A Recycling-Free Nanocatalyst System: The Stabilization of In Situ-Reduced Noble Metal Nanoparticles on Silicone Nanofilaments via a Mussel-Inspired Approach”
ACS Catal. 2018, 8, 1212

撤回
Retraction of “A Recycling-Free Nanocatalyst System: The Stabilization of In Situ-Reduced Noble Metal Nanoparticles on Silicone Nanofilaments via a Mussel-Inspired Approach”
ACS Catal. 2018, 8, 5023


去年発表されたシリコーンナノフィラメントに担持した金属ナノ粒子とその触媒活性に関する論文です。上に書いた通り論文疑義の通知を経て今年撤回とあいなりました。

撤回理由としては「チューリッヒ大での測定データを研究者に知らせず著者リストにも載せず勝手に投稿した」というものです。この論文の著者は1st authorがコレスポ、チューリッヒ大とNational University of Singapore (NUS)のダブルアポイントを持っている人で、まあなんかボス権力でやらかしたんかなあ程度のものかと思っていました。


が、撤回された元の論文を見るとそういう話でもなさそうです。

実は掲載から撤回に至るまでに、別のバージョンの論文が上がっていたのです。この顛末、というかそのバージョンは今現在そもそも加えられたことの痕跡すら抹消されています(PDF版)。Retraction通知が出た直後はPDF版も残ってたんだけど消したみたい。しかし、「ACS Active PDF」として掲載されてるものはこの事後追加されたバージョンがまだ残っています。詰めが甘いなあ。


撤回対象となった論文本体↓
2018Retraction04.png

↑投稿段階、ならびに現在残っている状態での著者はこの「6人」

2018Retraction05.jpg


で、同じ論文のはずのものをこ↑こ↓で見てみると・・・・

2018Retraction03.png

著者が9人!3人も増えてるー!しかもコレスポまで増えてるー!


で、これに関する記述が後ろの方に載っていて、

2018Retraction02.png

いや、3人も追加しといてしれっというなよ。



実はこの論文が受理され、オンラインに載ったあと、ページ番号が付く前にチューリッヒ大所属の3人が新たに著者欄に追加されたのです。この3人、元々の論文では「謝辞」に書かれていただけの存在でした。それが突如著者側に事後移動したことになります。それも単に3人増えただけでなく*付き責任著者まで増えるという。

おそらく名前外して論文出したことがバレて事後で「著者に追加しといたから許してちょ」っていう対応をしたんだと思いますが、この後、上に載せたように"Expression of Concern(疑義の表明)"がアメリカ化学会(ACS)側から公表され、撤回と相成ったわけです。状況から察するに

「勝手に論文出してんじゃねえよしかも俺らの名前外しやがって」

『あとから追加しといたから許してちょんまげ』

「ふざけんな!」

という流れかと。この"Expression of Concern"って最近ACSで見るようになったんですがなんなんですかね、タレこみとかあった場合に出るのかな?
個人的に面白いと思ったのが撤回時の状況。途中で著者が追加されてはいますが、あくまで撤回は投稿時オリジナルの6人の名前でのみ。まあ勝手に出されて後から名前追加されたのに撤回の不名誉まで着せられる覚えはないので妥当な対応なんですが、こういった背景があって、オンラインに載っているversionは著者追加版が消されているわけです(履歴くらい残してもいいんではと思うけど)、

ただこの話のわけわかんない点として、このコレスポの1st Authorは最初述べた通り、「チューリッヒ大とNUSのダブルアポイントを持っている人」として登録されています。が、調べてみるとチューリッヒ大での所属実績は特に見当たらず、NUSの方をみるとなんとただのポスドク(もともとの論文のlast authorのラボ、こっちにコレスポの*ないのもやばくね?)。そしてこの論文にPI以外で名前が載っている人は(NUSにもチューリッヒにも関係ない)2ndのエコールポリテクのポスドクの他は中国の武漢大学が3人、この問題の1st authorが学位を取得した場所の人間です。なんかもうわけわかんなくなってきた上になんか真っ黒な感じしてきたぞ・・・?
まあいずれにしても黙って投稿してバレたからって後で追加して乗り切ろうとしたらダメだった、って話には変わりないので。


というあまりにあんまりな話だったので独立して書いてみました。1ラボ内ならまだしも外部共同研究でのこういうオーサーシップは確実に泥沼化するのでちゃんとしましょうねって話。
なお化学に関係ない分野も含めた場合、個人的今年の圧倒的最強の論文撤回は
「同じ中身の論文が全く違う著者から出された、それもその理由が『英文校閲業者からそいつに漏れた説』」
のやつです(J-Stageで撤回理由等pdfもタダで読めます)

Nucleophagy in Human Disease: Beyond the Physiological Role [Retraction]

こういう異次元のことやらかす人間いるからますます論文大変になるわ・・・。
なおねつ造とは別に画像編集や画像創出技術の発展もこういうのに拍車をかけており、
機械学習で電気泳動画像を本物と見分けがつかないレベルでゼロから作成するということすらすでに試みられているようで、もうデータの信頼性は一体どこで担保すりゃいいんですかねえ・・・・。目の前で作れとか言われるんちゃうかそのうち。



posted by 樹 at 23:03 | Comment(1) | 研究・論文不正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
そういうことするのはどうせアノ国の人だろうと思って読みだし、途中、「チューリッヒ大で欧米人か?J-stageってことは日本人か?」と思ったけど、結局、期待を裏切らないなと。。。
といっても、日本人研究者もたまにヤラカスからあんまり強く言えないのが悲しいところ。。
Posted by am at 2018年09月12日 23:22
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