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2018年05月24日

トリアゾール環を機能素子として使った話 その2:環そのものを機能素子化した話

はい、大分あいだが開いてしまいましたが前回の続き↓

トリアゾール環を機能素子として使った話 その1:金属触媒反応への利用


TriazoleIntro2.jpg


アジド―アルキンの[3+2]クリック反応で簡単に作れるようになった1,2,3-トリアゾール環。
前回は金属触媒反応への利用、トリアゾールをぶっ壊したりリガンドにしたりといった使い方でしたが、今回はもっとダイレクトに、トリアゾール骨格そのものを使った例をまとめました。


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ヘテロ環というと創薬の母骨格の他にも、蛍光発光素子としての利用もよく知られています。が、トリアゾールそのものは特にそういった特性はありません。そんななか、難波、谷野らは1,2,3-トリアゾールを含んだ2環性分子、トリアザペンタレンを合成し、その大きなストークスシフトとソルバトクロミズムを活用した蛍光観察などケミカルバイオロジー研究へと応用しています。置換基の位置によって発光強度が変わるので、最近他のグループも開発に乗り出してきてるようです。また、同じ蛍光発光性の2環性トリアゾール型分子ではシンガポールのLohらもピリジニウムトリアゾリノンイリドを報告しています。

TriazoleFluorescence.jpg
K. Namba, K. Tanino, et al.
Direct Synthesis of Fluorescent 1,3a,6a-Triazapentalene Derivatives via Click-Cyclization-Aromatization Cascade Reaction
J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 11466


Synthesis of yellow and red fluorescent 1,3a,6a-triazapentalenes and the theoretical investigation of their optical properties
Chem. Sci. 2015, 6, 1083


実践的合成研究を基盤としたイネ科植物の鉄イオン取り込み機構に関する研究
ファルマシア, 50, 305


Two-Step Synthesis of Fluorescent 3-Arylated 1,3a,6a-Triazapentalenes via a Three-Component Triazolization Reaction
B. Verbelen, W. Dehaen
Org. Lett. 2016, 18, 6412


S. Pankajakshan, T.-P. Loh, et al.
Copper-catalyzed aerobic carboxygenation and N-arylation of [1,2,3]triazolo[1,5-a]pyridines towards pyridinium triazolinone ylides
Chem. Commun., 2015,51, 5929


Aerobic Copper Catalysis for Tandem Oxy-N-alkenylation of [1,2,3]Triazolo[1,5-a]pyridines
Adv. Synth. Catal. 2016, 358, 3034.



さて、機能分子としての次は化学変換反応としての利用です。前回は金属触媒リガンドとしてのトリアゾールを紹介しましたが、トリアゾールそのものを触媒化、つまり有機触媒として利用することはできるのでしょうか。ここでカギとなるのが、1,2,3-トリアゾールの双極子モーメントです。1,2,3-トリアゾール骨格の双極子モーメントベクトルは窒素原子ではなく炭素側に向いています。つまり、その炭素上にある水素原子の酸性度が高くなっているのです。実際N1位置換トリアゾールの場合、残っているC5位の水素原子のpKaはDMSO中で28くらいとされています。アセトンのpKa(DMSO中)が26.5なので、比べるとその酸性度の高さがわかります。
そしてこの微妙な(?)酸性度がほかの分子との水素結合性を向上させ、特にアニオン分子の認識に非常に有効ということが知られています。

TriazoleDipole2.jpg
(Personal Accounts)
1,2,3,–Triazole-Based Catalysts: From Metal- to Supramolecular Organic Catalysis
O. G. Mancheno, et al.
Chem. Rec. 2017, 17, 485


Anion Recognition by 1,2,3-Triazolium Receptors: Application of Click Chemistry in Anion Recognition
A. Kumar, P. S. Pandey
Org. Lett. 2008, 10, 65



Manchinoらはこの超分子的な分子認識を不斉触媒反応へと展開しています。四つのトリアゾールを含む多数の分子認識C-H部位を持ったキラル有機触媒を利用し、脱芳香族型の不斉Mannich反応を報告しています。この手の超分子というか共有結合性のない不斉反応って基質本体が一体キラルソースのどのあたりにいるのかいつも謎なんですがその辺むずかしいんだろうなあ。ちなみにこのトリアゾール分子、書く時の都合上平面っぽく書いてますが、実際にはらせん状になっていてコイルの中心にアニオンが囲まれている形になっています。

TriazoleOrgCat1.jpg
Chiral Helical Oligotriazoles: New Class of Anion-Binding Catalysts for the Asymmetric Dearomatization of Electron-Deficient N‑Heteroarenes
O. G. Mancheno, et al.
J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 13999


この超分子的な相互作用と従来の有機触媒的な活性化・不斉反応場を組み合わせた例もTosteらによって報告され、BINOLキラルリン酸にトリアゾールを連結したイソキノリン骨格の酸化・不斉アミナール環化を報告しています。これ単にトリアゾールの分がでかくなっただけじゃないの?と思われるかもしれませんが、嵩高い芳香環など立体障害以外の効果がない置換基だと低い光学純度でしか生成物が得られないという事実から、やはり上述の水素結合による影響が大きいと考えられています。

TriazoleOrgCat2.jpg
Asymmetric Cross-Dehydrogenative Coupling Enabled by the Design and Application of Chiral Triazole-Containing Phosphoric Acids
F. D. Toste, et al.
J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 14044


そのトリアゾールC-Hの酸性度をさらに向上させた触媒もあります。大松・大井らは1,2,3-トリアゾールではなくN1位の逆サイドN3をさらに置換させたトリアゾリウムイオンを母骨格としたキラル有機触媒を開発しています。こうなるとNHC(N-Heterocyclic Carbenes)のN一個多い版の前駆体っぽく見える通り、5位水素の酸性度はこれまで以上にさらに上がります。この触媒を利用し、α-アルキル化やエポキシド開環、極性転換型α-アミノ化を高エナンチオ選択的に達成しています。

TriazoleOrgCat3.jpg
K. Ohmatsu, T. Ooi, et al.
Chiral 1,2,3-Triazoliums as New Cationic Organic Catalysts with Anion-Recognition Ability: Application to Asymmetric Alkylation of Oxindoles
J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 1307


A Modular Strategy for the Direct Catalytic Asymmetric α-Amination of Carbonyl Compounds
Chem 2016, 1, 802.


さて、最後に天然物ですが、どうにもこういったNがたんまり入った環、特にNが連続したようなものは人工的な感じがします(アジドとアルキンから作るって思いこみもあるんだろうけど)。しかし、これまでにいくつも見てきた通り、自然界は「え?こんなもんも作っちゃうの?」という構造の分子を平気で出してきたりします。1,2,3-トリアゾール環に関しても数は少ないですが天然物が知られており、古くは抗菌等様々な活性が報告されている8-アザグアニン、最近でもα-グルコシダーゼ阻害活性を有するトリアゾールカルボン酸部位を持った化合物が単離報告されています。これどうやって生合成されてるんだろうなあ。
なお人工的なやつを言い出すと永遠に終わらないのですが、接続部位としてではなくトリアゾールを母核としたちょっと珍しい低分子医薬候補分子も開発され、セリン加水分解酵素阻害活性を示すことが報告されています。ところでこれデータのcorrectionすでに出てるうえさらにそのあと構造データの訂正だされてるんですがこれは。

TriazoleBioactive.jpg
(Review)
Natural Products with Heteroatom-Rich Ring Systems
E. K. Davison, J. Sperry
J. Nat. Prod. 2017, 80, 3060.


Quinoliniumolate and 2H‑1,2,3-Triazole Derivatives from the Stems of Paramignya trimera and Their α‑Glucosidase Inhibitory Activities: In Vitro and in Silico Studies
T. H. Nguyen, et al.
J. Nat. Prod. 2017, 80, 2151.


B. F. Cravatt, et al.
Click-generated triazole ureas as ultrapotent in vivo–active serine hydrolase inhibitors
Nat. Chem. Biol. 2011, 7, 469.


Triazole Ureas Act as Diacylglycerol Lipase Inhibitors and Prevent Fasting-Induced Refeeding
J. Med. Chem., 2017, 60, 428


Acid-mediated synthesis of fully substituted 1,2,3-triazoles: multicomponent coupling reactions, mechanistic study, synthesis of serine hydrolase inhibitor and its derivatives
H, Tanimoto, et al.
Tetrahedron 2014, 70, 9828.



というわけで1,2,3-トリアゾール骨格が使われているいろいろな例を2回にわたって紹介してきました。はいはいクリッククリックってくっつけるだけのものじゃないのよトリアゾール。分解してもそのままでもいろいろ使えるのよ。ってなわけで今後こうした目線で見ていくと新しいものが見えてくるかもしれません(まあでも基本単なる連結部位なんだけど)

by カエレバ

posted by 樹 at 09:00 | Comment(0) | 有機化学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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