どうもウィスキーがブームで枯渇した上に、売れるようなレベルにまで熟成させるのに時間がかかりすぎるというのも一因にあるらしいですが、もともとジン好きだから無問題ヾ(*´∀`*)ノ
個人的なお勧めジャパニーズ・ジンは、ロックまたはストレートで楽しむならバレルドジンの『クラフトジン・岡山』、夏らしくトニックかソーダ割でガバガバ行くのなら鹿児島の『WA・BI・GIN(和美人)』ですね。京都の『季の美』?あれいつでも呑めるからいいやってんでまだ飲んでないので知らね(ぉ
そんなジンの話はさておき、お酒と言っても同じ種類、例えばウィスキー1つとっても
HaenninenらはμTAS(micro-Total Analysis System)と命名したチップを用い、飲料類のセンシングによる分類に成功しています(と言っても特許がらみなのか詳細があんまりないのですが)。モジュレーターとして金属塩、塩基、色素やγ-グロブリン、アルブミン等々様々なものを用いることで液体、特に飲料の分類を可能にし、炭酸飲料やジュース、そしてウォッカ(著者が北国フィンランドなので)が、各種ブランドによって異なる蛍光分析でのパラメータを示すような評価系を確立しました。ジュースについてはこれで甘い・苦い・三酸味といった形での分類ができるようです。
Fuzzy Liquid Analysis by an Array of Nonspecifically Interacting
Reagents: The Taste of Fluorescence
P. E. Hänninen, H. J. Härmä et al. J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 7422−7425
そして最近、それよりもさらに単純化した分析でウィスキーの評価をした論文が発表されました。
A Hypothesis-Free Sensor Array Discriminates Whiskies for Brand, Age, and Taste
A. Herrmann, U.H.F. Bunz et al. Chem 2017, 2, 817–824
解説:P. Keshri, V. M. Rotello, Chem 2017, 2, 751–759
著者であるドイツ・ハイデルベルク大学のBunz教授はもともとポリイン分子の合成と物性といった構造有機化学の人ですが、そのポリインをセンサーとしてウィスキーのブランド、年代、味を蛍光発光によって分類できるようなシステムを構築しました。用いた分子は、スクリーニングの結果選びだされた電荷的に中性、陽性、陰性な3種類のポリイン。えらい単純ですねえ、こんなのでちゃんと分類できるくらいの数値が出せるのがすごい。
また論文中では「ポリイン以外でも評価系組めるんじゃね?」というわけで同様の電気的性質を持つペプチドをGFP(緑色蛍光たんぱく質)と連結させたセンサー分子でも評価系を組み、このどちらか(もしくは両方)を用いてその蛍光発光性を評価することで、ウィスキーの分類に成功しています。ただこの評価系をもって現時点でクォリティとかを判定するというわけではなく、単に「同じようなものでもちゃんとパラメータ位置が異なり、年代等々のパラメータに沿った感じで分布してる」というだけなので、これでちゃんとした判定や評価をするようになるのはまだだいぶ先の話でしょう。ちなみに評価対象にしているウィスキーはJim Beam、Johnnie Walker(赤)、Ballantine’s Finest、Jack Daniel's(黒No7)といった
↑GFPの手ごろなリボンモデル絵がなかったんでこれで勘弁してください
2017.7.26追記---------------------------
上述のウィスキーセンサー舌の続報として、飲料といった複雑なものではないですが同様のポリインセンサーを使ってアミノ酸を極性・疎水性・方向属性・陽性陰性で分別評価した報告も登場しました。
A Simple Optoelectronic Tongue Discriminates Amino Acids
U.H.W.Bunz et al. Chem. Eur. J. ASAP DOI:10.1002/chem.201702826
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さて、ここまで書いた例はお酒そのものをセンシングして評価するというものでしたが、お酒に関係したまた別の検出分子も。私はいい酒は一人で飲みたい
これだけで状況全部理解できちゃういらすとやパワーおそろしい
で、そういう事態にならないように事前にこっそり検出できればいいんですが、既存の方法だと数時間とか結構な時間を必要とする上分析装置もいるので、デート現場に巨大な機器を持ち込む勇者でないかぎり無茶な話です。
そんなわけで(?)、シンガポールNUS・A*STARのYoung-Tae ChangらはこのGHBを迅速に検出できる蛍光センサーを見出しました。
Development of a fluorescent sensor for illicit date drug GHB
Y.-T. Chang et al. Chem. Commun. 2014, 50, 2904
Changらは既存の蛍光分子からのスクリーニングにより、BODIPY誘導体である下のような分子を見出し、GHBの検出試験を行ったところ、30秒以下で元々の蛍光発光がGHBによって消光することを肉眼で観測できることが分かりました。NMR実験から、図のような色素とGHBの相互作用によるものだと想定しています。
評価法も色素のDMSO溶液と対象の飲料(アルコール以外でも)とを1:1混合し、365nmのUVランプを当てるだけなので、ビジュアルでの確認なら分析機器は不要なのがいいですね。各種アルコール等飲料でのGHB検出能の評価を行っており、水、ウォッカは色素量1mg/mL以下でも検出が可能なレベルだそうです。一番よくないウィスキーでも10mg/mL。ちなみにChang Yong-Tae教授はシンガポールNUSおよびA*-STAR所属(当時)ですが韓国人だからですかね、韓国焼酎のチャミスル
なお、別にこれじゃなきゃGHBが検出されないわけじゃないので、例えば最近だとイリジウム錯体を使ったリアルタイム検出法も報告されています。
A long-lived iridium(III) chemosensor for the real-time detection of GHB
Sheng Lin, S.; Ma, D.-L. et al. J. Mater. Chem. B 2017, 5, 2739
というわけでお酒にまつわる論文をいくつか紹介しました。クソ暑い日が続きますが酒以外の水分も忘れないように。
冒頭に出たジンの話が全くなかったことに気づいてはいけない