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2016年06月01日

出版社ごとのオープンアクセス化費用をまとめてみた(有機合成化学向け)

※6/2 PLOS ONEやいただいたコメント情報をもとにRSCバウチャープラン、ACS omegaについて追記

日ごろ読んでいる論文誌の購読料が高騰しまくって、一般人どころか大学ですら購読をあきらめざるを得ない状況になってきたことはこれまでにも書いてきました。

・論文誌が高すぎて
・論文誌が高くなりすぎて
・タダで読めるけど・・・-オープンジャーナルのあやしい世界


そんな出版社に対するボイコットに近い状況に加え、

(゚Д゚)<公的な金を使った成果を、一般が見られない形で還元するのはいかがなものか

というお上の要求もあって、誰でも読めるオープンアクセス(OA)スタイルの論文誌がここ数年注目されています。最近アメリカだけでなくEUも成果論文のオープンアクセス化を義務にする流れとなっており、研究成果のOA化は今後も加速しそうです。




でもみんな読めるようになるんでしょ?めでたしめでたし・・・とはいかないもの。このオープンアクセス論文にするには成果を公開する研究者側が金を払う必要があるため、研究費を余計にとられる形になってしまいます。

確かに論文誌を買ってないと論文読めないというのも知の占有化になってよろしくないし、大学外のサイエンスライターだったりマスコミが見ようにも1報5000円もかけて読みたいかといえば微妙ですからオープンになるのに越したことはないのですが、現実は

「論文誌購読のお値段は変わらない」

「OA化でさらに研究者個人が研究そのもの以外にも金を費やす羽目になる」


になっているので、どうにもお題目だけが立派になってるだけで体よく余計金をむしり取られてる感じが個人的にすごいするのがちょっと。いつも通りの購読料をとりつつOAもやっているハイブリッド型の論文誌だと前より儲かってませんこれ?

オープンアクセスを義務付けるんならその投稿費用を資金を出す機関が負担する、といったシステムにしとかないと論文を出せば出すほど無駄に貧乏になるという意味不明な状況になるんですが。。。本来オープンアクセスになれば大学としての図書費は浮くはずなので、それを研究者の投稿費に回せれば一番いいのに、その図書費が減らないのにこういう状況になっているのもまた問題。研究費ただでさえ減らされてるってのにねえ。


という現状はおいといて、オープンアクセスにするとなんか世の中に貢献してるぞ!って感じに見せられるし、科研費報告のシステムでも「これオープンアクセスにしてる?」って聞かれる項目もできたくらいなので、『オープンアクセスあくしろよ』というプレッシャーはどんどん強くなっております。そんなわけで化学系の各ジャーナルにおけるオープンアクセス化に必要なお値段についてまとめてみましたので、OA化の参考にしてみてください。

なおOA化には「即時オープンアクセス」にするゴールドプランと「一年後など一定期間後にOA化する」グリーンプランを設けているところが多いのですが、今回はゴールドのみを紹介します。


・英国化学会(RSC)
Gold open accessとGreen open accessの二つを用意しており、論文誌関係なくすべて同じプランの模様。オープンアクセス誌であるChemical Scienceも同様です。ただポンド建てなのでドル感覚で思ってると痛い目見ます。速報、フルペーパー、総説で料金が異なります。

・RSCお値段表(Gold open access)
Communication     £1,000 (税別)
Paper         £1,600 (税別)
Review-type article £2,500 (税別)

※6/2追記
コメント欄でもご指摘いただき、こっちでもすっかり忘れていましたが、RSCは購読パッケージに応じてバウチャーを用意しています。これを使うと研究者・大学側は無料で論文をOAにできます。去年RSCの中の人に聞いて初めて知ったシステムなのですが、これ知らない人が結構いるようなので(中の人も嘆いてました)RSCに論文が通った方は一度図書館にこのバウチャーについて確認をとってみてください。


・Wiley
論文誌ごとでオープンアクセス化料金が異なり、High Impact Factorジャーナルほど高い・・・と思いきやそうでもない不思議。お値段はユーロ建て。学会誌と違い出版社になるとやはりお値段は・・・

・Angew. Chem.Int. Ed. €3,500(総説)/€2,500(その他)
・Chem. Eur J. €4,000(総説)/€3,000(その他)
・Asian J.Org.Chem. €3,500(総説)/€2,500(その他)


・Elsevier
世界に名だたる守銭奴論文誌会社ですが、OA化の費用については他誌とさほど変わらない印象・・・いや、やっぱ高いか。これは論文誌ごとでお値段が変わるようで、Tetrahedron系やBiol Org Med Chem系はみんな$2,150、フルもレターも関係なし。ちなみに最高額はCell系の$5,000。たっけえええええ、と思う一方でTLとかでもその2/5もするのかとも思ったり。化学誌に関していえばWileyよりは安そう。

・エルゼビアの論文誌オープンアクセス化料金表(PDF, Elsevier)

なおElsevier、最近もこの相変わらずめちゃ高い購読パッケージをとるスタイルに対する相次ぐ批判に強い反論を出したようですが、その反論は有料会員登録しないと読めない、という面白いギャグをかましている模様。

・Elsevier defends its value after Open Access disputes (The Bookseller)


・アメリカ化学会(ACS)
アメリカ化学会(ACS)は複雑でちょっと変わった料金体系をとっています。というか上手くやっていて、オープンアクセス("Author's Choice"というプラン名)にする際の料金がACS会員/非会員で異なり、当然会員の方が安く非会員は会員の倍とられます。これはACS入会しないと損ですね!(棒読み)

そしてそれだけではなく、大学や研究所によっても値段が変わり、ACS全紙購読のフルパッケージプランを購読している施設だとさらにお安くなります。例えば即時OA化する場合、非会員でフルパッケージを購入していない大学の人は$4,000もとられるのに対し、会員かつフルパッケージ施設であれば$1,500でオープンにできます。1年後にオープンにする場合にはさらにお安く10万円を切ります。これはもう年会費自腹で払ってACS会員になってフルパッケージ購読しないと損ですね!(白目)なお値段はJACSでもJOCでもOPRDでも同じ模様。

・ACSお値段表(PDF、アメリカ化学会)

なお自分の大学や研究所がフルパッケージを購入しているかどうかはACSの以下のページでも確認できます。結構多くの大学が買っているので適用範囲広いかも。下の検索はなぜか日本の名前で検索しないと引っかかりません。例えば東京大学はUniversity of TokyoではなくTokyo daigakuで出てくるので注意。

・ACSフルパッケージ(All ACS publications)購読施設確認


また2016年になって、ACS omegaなる完全オープンアクセスのジャーナルを立ち上げたようで、こちらは$500~2,000とまた別の料金体系をとっているようです。どうも会員かどうかに加えて国ごとでも値段が異なる様子。今年に入ってACSに投稿されたことがある人は途中に「もしrejectされたらこの原稿をACS omegaに送っていいですか」というチェック項目があるので見たことがあるかと思います。

・ACS Omega


・日本化学会
フルペーパー誌であるBCSJが10万、Chem Lettが5万。他の出版社が20万円近くからスタートしていることを考えると激安価格。スーパー玉出もびっくり。
論文をオープンアクセスにしてなんか貢献してる感を出したい場合には大変お得と言えるでしょう。というわけでみんなBCSJ、CLに投稿するように(ぉ

にしてもこの2誌、OAに関するアピール全然ないんですよね(;´Д`)儲かるのに
以下にソースリンクを張り付けてはおきましたがこれ探すのすごい苦労したんだけど・・・。もっとアピールすればいいのに。ちなみにOA化に関してはどうやらゲラ校正の段階で初めてOA化についての話が出てきて、それ以外の段階では「OA化どうっすか!?どうすか!?」という、他誌では普通にやる宣伝すらない模様。さすがにもっとアピールしたらどうでしょうか。

・Bull Chem Soc Jpn  100,000円
・Chem Lett 50,000円


ちなみにそもそもオープンアクセスになっている論文誌はどれくらいするのかというと

・Nature Communications 661,500円(税抜)
・Scientific Reports 170,000円 (税抜)
・PLOS ONE $1,495

たっけえ!!!
70万弱とか民間助成だったら下手したら半額から全額論文だけで吹き飛ぶじゃん、なんなんだこれ。Sci RepもこうしてみるとOA誌という割に他のハイブリッドOA誌と大してかかる値段変わらんなあという印象。Nature(と同じ出版社っていう)ブランド?
なおこれだけ比べるとPLOS ONEが安そうに見えますが、PLOS ONEはPLOSシリーズの中では最安で他は$2000超えます(あとページ数で値段変わるって書いてあるんだけど、これ最低価格ってこと?)


と、こんな風に大手(?)論文誌出版元のOAお値段をまとめてみました。こうしてみると日本化学会が圧倒的安さをみせてますね。現実にはこのほかにもカバーに採用されたらそれ代(10うん万円)だったりカラーページ代も追加で払わされたりすることを考えると、なるべくお安くあげたいところ。

というわけでみなさんもBull Chem Soc Jpn・Chem Lettに論文投稿、オープンアクセス化して日本国内誌の盛り上げにも貢献しましょう!
(やけにほめてますが、一銭モ貰ッテナイデスヨーホントデスヨー

※9/2追記
コメント欄でもRSC、ACSのオープンアクセスについて情報をいただいているのでそちらもぜひご覧ください。


この記事へのコメント
国立大学で図書館員をしている者です。
基本的な料金についてはまとめられた通りなのですが、いくつかの出版社は割引を提供していますので、情報提供致します。

RSCについては、ACSのように、電子ジャーナルパッケージ購入機関に対して割引があります。パッケージの支払い金額に比例して、一定数のバウチャーを図書館は受け取ることができ、そのバウチャーを使うと無料で論文をOAにできる仕組みです。
http://www.rsc.org/journals-books-databases/librarians-information/products-prices/rsc-gold/
http://www.rsc.org/journals-books-databases/librarians-information/help-guidance/#help-gold4gold-exp

またACSは、昨年購読料も論文投稿料も無料なオープンアクセス誌、ACS Central Scienceという雑誌を発刊しました。
http://pubs.acs.org/journal/acscii
他にACS Omegaというオープンアクセスメガジャーナルも準備しています。こちらの料金は$500 - $2,000と、ハイブリッドOA誌とは価格体系が異なるようです。
http://acsopenaccess.org/

日本化学会は、仰るようにこれ以上割引の余地がないほど極めて安価ですが、化学者の皆様に知られていないようで、勿体ない限りです。
Posted by Zhang_Mao at 2016年06月02日 19:06
Zhang_Maoさん

情報ありがとうございます!RSCについてはすっかり忘れていました。ACS Omegaはそういうことだったのですね。投稿時に「ここはねられたらACS Omegaに原稿流してええか?」っていう項目があってなんだこれ、って思ってました。ACS Central Scienceはどうも見た感じタダでOAにするだけの価値がある論文を要求している感じですね、相当ハードル高そう・・・

PLOS ONEの値段表と合わせていただいた情報を追記しました。ありがとうございます!
Posted by かんりにん at 2016年06月02日 23:22
 本文にまで反映していただき、ありがとうございます。追記された内容、いずれも興味深いものでした。
 特にACS Omegaが、NatureにとってのScientific Reports のように、カスケード査読を前提としたシステムであることが確認できたのはありがたいです。図書館からはなかなか投稿画面を見ることができませんので。

 「情報提供」といいながら、むしろこちらが教えていただくことが多く、大変勉強になりました。ありがとうございました。
Posted by Zhang_Mao at 2016年06月07日 21:01
Beilstein Journal of Organic Chemistryというジャーナルは、完全オープンアクセスで著者に掲載料を求めていません。査読をするジャーナルでweb媒体で出版されるだけでなく刷子でも出版されます。現在のインパクトファクターは、2.337とあまり高くはないですが、内容は優れています。新しい論文出版のスタイルですので、研究者としては盛り上げていくべきなのではないかと思います。ちなみに、姉妹雑誌としてBeilstein Journal of Nanotechnologyもあります。
Posted by at 2017年11月10日 09:49
ありがとうございます。Beilstein JOC、IF値のわりにいいの多いんですよね、フルペーパーだし。もっと知名度上がってもいいのになあと思う次第。Instituteの運営費だけでいまのところ全部まかなえてるのはすごいですねえ。これが規模が大きくなった時にどこまで担保されるのか不安ですけど。
Posted by かんりにん at 2017年11月15日 10:14
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