最近すっかり学部生向けエントリーを書いてない気がします。
どうだったか全然覚えてないのですが、糖の話は生化学にも通じるのでその種類やらなんやらを覚えさせられたような気もします。代表的な糖と言えばグルコースに代表されるアルドヘキソース類。なお砂糖のような2糖類は今回無視します(ぉ
アルドヘキソースは上に示した通り全部で8種類あり、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロースと命名されています。正直立体化学とかを覚えるのはグルコース、マンノース、ガラクトースくらいで大体事足りる気がするのですが、それにしてもOHの向きがどの糖がどうだったっけ、という風になりがちです。なんせOHは糖1つにつき5個もあるし・・・。
という風にグルコースってどんなんだっけ?ガラクトースってどう描くんだっけ?とお困りの
ちなみに今回はフィッシャー投影式を中心にして解説しますので、フィッシャー投影式←→ジグザグ式への変換法がわからないという方は下のエントリを参照ください。
フィッシャー投影式をジグザグ式に変換する方法
Mnemonics for the Aldohexoses That Aid in Learning Structures, Names, and Interconversion of Fischer Projection Formulas and Pyranose Chair Forms
Shengping Zheng
J. Chem. Educ. DOI: 10.1021/ed500254x
この論文では糖(アルドヘキソース)のD/Lやα/βについての解説や覚え方をまとめて紹介しており、今回は特にフィッシャー式での魚の背骨に生えてる水酸基の向きの覚え方を紹介します。
まず、糖のフィッシャー投影式上で、右に水酸基がある場合を0、左にある場合を1とし、それぞれの炭素ごとに数字を振っていきます。右にある場合をoff、左にある場合をonとする2進法で考えるとわかりやすいかと思います。そしてその数字をフィッシャー式の下側から順に並べていきます。
すると、0,1で構成される4ケタの番号が出来上がります。
例えばD-グルコースであれば「0010」、D-マンノースであれば「0011」となります。
この作業をすべてのアルドヘキソースに対して行い、それぞれの糖の番号を出します。
そしてアルドヘキソースを左から
アロース→アルトロース→グルコース→マンノース→グロース→イドース→ガラクトース→タロース
と並べると、先ほどつけた番号が
0000 → 0001 → 0010 → 0011 → 0100 → 0101 → 0110 → 0111
という風に2進法で進んでいく形に並んでいることがわかります。
ちなみにすべてD糖で説明していますがL糖の場合は0,1を入れ替えればOK(水酸基の左右を入れ替えるのに相当)。
つまり、この番号の並びで糖の名前を覚えていけば、構造と名前が完璧に対応できるようになるわけです。
とは言っても
アロース→アルトロース→グルコース→マンノース→グロース→イドース→ガラクトース→タロース
の並びはなかなかに覚えにくい。イドースとかタロースとか全然なじみないし。
そこで各糖の名前の最初の方の文字
Allose (All)
Altrose (Alt)
Glucose (Glc)
Mannose (Man)
Gulose (Gul)
Idose (Ido)
Galactose (Gal)
Talose (Tal)
をもじってできたごろ合わせの文、それが
All Altruists Gladly Make Gum In Gallon Tank
という文。これを覚えておけば先ほどの番号の並びと糖の並びを対応させて覚えることができます。
ちなみに"altruist"は「利他主義者」。訳すと覚えられなくなるので負け。
「英文かよ!覚えられるかそんなもん!」
という言い訳は知りません。大体文科省が「スーパーグローバル大学なんちゃら」とか言ってるんだから国の方針にに従って英語で覚えれ!ヽ(#`Д´)ノ
ついでにaltruistって単語も覚えれ!ヽ(#`Д´)ノ
というわけで、実際に使うときにはフィッシャー式における0,1の取り決め、および先ほどの
「All Altruist Gladly Make Gum In Gallon Tank」という文章を覚えておき、必要な糖と番号を対応させて書き出す、という流れになります。これでアルドヘキソース8種類を簡単に全部書けるようになります。
ちなみにアノマー位のα/βの決め方は以下の通り。まあこの辺必要になるのは研究室入ってからでしょうけど。
同じやり方で炭素が一個少ないアルドペントースも比較的簡単に覚えられるようになります。とりあえず2進法の順に並べた形で同様に
リボース → アラビノース → キシロース → リキソース
を覚えておくと立体化学がスラスラと出てきます。ただこの場合Xで始まるキシロースのせいでごろ合わせが難しいのですが4種類しかないしガチで覚えとけばいいような気も。
というわけで単糖のアルドヘキソースの覚え方を紹介しました。立体化学が多くてややこしい糖類をまとめて楽に覚えられる方法なので、フィッシャー式からの変換法と合わせてマスターすると役立ちます。
こういうエントリーはもっと期末試験までに余裕がある時期にやれよと小一時間(ry
関連エントリ
・フィッシャー投影式をジグザグ式に変換する方法
・R/S表記やE/Z表記など
・ニューマン投影式の理解の仕方