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2013年10月25日

アジドTシャツの話

アジド基は窒素原子3つからなる官能基で、1,3双極子としても使えるし、窒素官能基の導入だったりと色々な機能があります。最近ではアジドを使った[3+2]反応であるHuisgen反応がクリックケミストリーの代表としてすさまじく使われていることもあり、アジド=クリックと言った印象を持っている人も多いのではないでしょうか。なお、分子量が低い、もしくは分子全体におけるアジドの割合が大きければ大きいほど爆発性が高くなるシロモノなので、金属スパチュラでの取り扱いは厳禁。そうでなくても取扱いには注意しましょう。

アジドの構造.jpg


このアジド、人工化合物ならいくらでも使われていますが、意外にもこの官能基を天然物はこれまでに知られていません・・・・・・と思われていました。

実はほとんどの文献に無視されていて全然気づかなかったのですが、たった一つだけ、アジド基をもった天然物というものが報告されています。それは1985年に渦鞭毛藻から発見され、X線結晶構造解析によってその構造が確認された化合物です。その構造はこちら。

アジド天然物.jpg


Structure of 6-azidotetrazolo[5,1-a]phthalazine, C8H4N8, isolated from the toxic dinoflaggelate Gymnodinium breve
M. B. Hossain, D. Van Der Helm, R. Sanduja, M. Alam
Acta Cryst. 1985, C41, 1199-1202


単純な構造のようにも見えますが、実にユニークな構造をしています。アジド基を持っているだけでもとてつもなくレアなのに、創薬分子にしか見られないと思われているテトラゾール(4つのNでできてる5員環)まで持っているというプレミア級の構造。実際この分子は「テトラゾールを有する唯一の天然物」とされています。その上、さらにもう一つのNともつながり、「5連続窒素結合」というとんでもない構造を持っています。おそらく、フタラジンのジアジド体からの片側アジドの環化によってできると思われますが、そもそもいったいどうやってアジドができているのか不思議です。というか、ここまでレア中のレアな構造を詰め込んだ天然物がここまでシカトされまくっているのはなぜなんでしょうか(citationもたったの3報だけ)。

と、クリックケミストリーでノーベル賞候補とまで言われ、ついに自然界からも見つかったこのアジド。その影響力と知名度のせいか、この間、なんと「アジド」とデカデカと書かれたTシャツを発見してしまいました。
それがこちら。


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アジドTシャツ下.jpg


まじでアジド(Azides)って書いてるし。

まさかこんなケミカルかつマニアックな化合物がTシャツになる日がこようとは。周期表Tシャツだってあんまりないのにね。そういえば過去にポール・スミスから出てた周期表Tシャツってのを紹介しましたが、今回のは周期表なんかよりも圧倒的に専門者向け。なんでこんなTシャツを・・・・。

・ブランドモノ周期表Tシャツの話


・・・おや、アジドの上になんかまだ描いてあるような・・・・






アジドTシャツ.jpg


ア、「アジド(Azides)」じゃなくて
「アジです(Azi-des)」だったーーーーー!


KO・U・HU・N☆

なんということでしょう。アジドかと思ったのに実際にはアディダス(Adidas)をもじったパロディーTシャツというオチ。

「アジだったらAziじゃなくてAjiだろう」
とか
「もはや元から離れすぎててパロディになってない」
とかいう突っ込みはさておき、3匹のアジがならんでいるところは3つの窒素原子からなるアジドとそっくり。これは偶然とは思えないのでおそらく有機化学の知識がある人がこのTシャツを作ったに違いありません(ない

このTシャツ、全国的に有名な温泉保養地である熱海駅前の土産屋さんで買うことができます(他でも買えるのかもしれないけど、色々調べても熱海以外ではAzidesじゃなくてAjidesばっかりっぽい)。

Tシャツ屋.jpg

ラボで「旅に出ます。探さないでください」Tシャツは笑えないのう


というわけでアジドをお使いの全国のみなさん、研究室旅行に是非熱海はいかがですか?そんで大量購入してラボのユニフォームに。なお、白文字以外にも金のやつもあります。2100円もするけど。

ちなみに某氏情報によると、このあたりにはアジドTシャツのみならず、「ジアジド」ン(地アジ丼)という大変デンジャラスなネーミングのドンブリまであるらしいので、もう熱海はアジドの研究所誘致して地域挙げて産業化しちゃえばいいんじゃないかしら。アジドラ焼きとかアジドネルケバブとか。
by カエレバ

by カエレバ
posted by 樹 at 11:00 | Comment(4) | TrackBack(0) | 有機化学雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
用語に関して質問ですが、「アジド基」というのは官能基の名称として正しいのでしょうか?
アジドという名称はアルコールやアルデヒドと同じように化合物の総称と解釈していたのですが、官能基の名称として使用される場合も多いのでしょうか?

アジド基でなければ何だと言われたら、それはそれで答えに困りますが・・・
Posted by kumaa at 2013年10月27日 02:19
>kumaaさん
化合物名であれば"azide"、官能基としてであれば"azido"になります。
たとえばPhN3は"phenylazide"でもあり"azidobenzene"でもあります。
日本語にするとどっちもアジドですが。
Posted by かんりにん at 2013年10月29日 00:09
なるほど!それは知りませんでした。
ありがとうございます。
Posted by kumaa at 2013年11月01日 04:04
>kumaaさん
すっかり追記するのをわすれていましたが、
このTシャツについていえば官能基名(Azido)ではなく
化合物としての"アジド(Azide)"なので
そういう意味ではこれは
官能基Tシャツではなくて化合物Tシャツですね。というわけで本文は間違ってることになりますので後で修正します。
Posted by かんりにん at 2013年11月01日 14:17
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