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2013年05月02日

molファイルで楽に分子を描こう

4月に研究室配属された人は一か月がたったわけですが、実験技術だけでなく勉強会、報告会でちゃんとした構造式、分子の形を描いて見せることの大切さも思い知らされている頃ではないでしょうか。

構造式はChemDraw(ChemBioDraw)というソフトで書いている研究室が多いかと思いますが、残念ながら普通にツールボックスにあるものをポチポチと組み合わせていくだけではきれいな形の分子にならず、不十分だったりします。特に研究室ごとでの流派や好み・センスなんかがあり、おんなじ分子でも


molfile galanthamine.jpg

↑なんか気に入らん、椅子型っぽい形で描きなさい!
とか、

molfile sugar.jpg

↑糖の形や向き、置換基の方向が気に入らない!あと環の前後が分かるように楔をうんぬん・・

などと色々言われることがあるでしょう。かなり極端な例を上げましたが、実際には角度が微妙に・・・とか結構細かいことを言われます。ならもっと前に言ってくれよという気もしますが。

こうやって指摘されたことを直して次の報告会などに使うわけですが、こういう構造式をいちいち最初から書いていくのは実にめんどくさいので、一度うまい具合に描けたなら大体それを今後はコピペしていくことになるわけですが、この方法として今回はモルファイル(mol file)を紹介したいと思います。

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molfile icon.jpg

アイコンは何のソフトに関連付けるかで変わりますが、モルファイルとは「.mol」の拡張子で表されるファイルです。このファイルには分子構造式の情報がその形や向きごと組み込まれているので、このファイルそのものをChemBioDraw上にドラッグ&ドロップすることでChemBioDraw上にその分子の構造を表示させることができるのです(もちろんChemBioDrawの[open]から拡張子を変更して開くこともできますが手順的にめんどくさい)。上記のファイルを例に取ると、こいつをChemBioDraw上に持っていくだけでナノプシャンの分子がいきなり出てくるのです。

で、なぜこれを紹介するかというと、同一研究室で同じ触媒リガンドやテンプレート・遷移状態を用いた説明図を使用している場合、スライドを描いている個人ごとで微妙に角度が異なったりしているとちょっとカッコ悪いことも。なので、美麗な分子式や状態図を一個作ってそれをモルファイル化、読み取り専用で上書きされないようにしたうえでグループ内で配布し、みんなで同じものを使ってしまえばいちいち形で悩まなくていいのです。スライドとかを用意する時間も圧倒的に減りますし。

また別にモルファイルじゃなくても通常の.cdxでもいいじゃんと思いますが、
@拡張子が異なるので大量に作成される.cdxに埋もれない(ファイル名を化合物名・遷移状態名にしモルファイル用のフォルダを一つデスクトップにおいて管理すると貼りやすくて便利かも)
A.cdxファイルからのコピペだといったいどれが最新なのかが分からなくなるのに対し、違う拡張子かつ分子ごとでの管理ができる。
BChemDrawの.cdxファイルは開けるソフトが限られるが、モルファイルは色々なソフトで開くことが可能(NMR処理ソフトDeltaについてる描画ツールなどでも開ける)
という利点がモルファイル利用には挙げられます。特にすさまじく高額なことでお馴染みのソフトであるChemBioDrawを持っていなくても開くことができるのは大きいかもしれません。フリーウェアであるACD/ChemSketchでも開いて編集することができます。


ACD/ChemSketch Freeware 12.0 (Chem-Station)


ではこのファイルをどうやって作るのかを見ていきます。
まず、ChemBioDraw上で分子を描いていきます。

ナノプシャン貼り.jpg

そしてそれを保存するのですが、通常のChemDrawファイル形式である.cdxや.cdsではなく、.molという形式に拡張子を変更してから保存します。これでお終い、あら簡単。
ちなみに普通のmolファイルとmolfile V3000の2種類がありますが、V3000の方が響きがかっこいい新しいファイル形式なのでこちらにしておくのがよろしいかと。
こうしたファイルを作っておけば、いちいちこいつを描かなくても一発で分子構造を表示できるし、足の上げ方が気に入らない!とか腰の振りが甘い!とかいう場合も簡単に編集が効くわけです。で一度スタイルを決めてしまえば、いつでも自分流の形の分子を貼ることができるのです(読み取り専用ファイルにして上書き防止するのを忘れずに)。

モル選択.jpg


以上は自分でモルファイルを作って利用する場合ですが、よそのモルファイルを利用する場合にも利点はあります。複雑な形をした合成標的分子や使用する試薬、リガンドなどをいちいち描くのも実にかったるいですし、たとえば雑誌会やブログとかである日突然、
「うおおお!!なんか農薬分子のアザジラクチンを紹介したくなったぞ!!!」
\\└('ω')┘//
という気分になることもあるかもしれません。またツイッター上にも何個かある化合物紹介bot(構造式botカルボン酸botなど)のように、リアルタイムで化合物の紹介を発信していく場合にはますます大量の分子の構造を用意して紹介しないといけません。論文の切り貼りで行ければ学内やら企業内での紹介は済むでしょうが、結構解像度の問題とか化合物番号が邪魔だとかなったりするのでできるなら自前で好きな形で書いたうえでupするなり自分の資料に載せたいところ。

しかし単純な分子なら一から描いても大したことありませんが、このアザジラクチンの場合その構造はというと・・・・
azadirachtin.jpg

うわめんどくさ!
となって書くのをためらうレベルで込み入った上に変な骨格を持っています。こんなのいちいち書いてたらそれだけで時間が喰われちゃう。

とお困りの貴方に朗報、実はこういった有機化合物等のモルファイルはオンラインデータベース上に公開されているものもあり、そこから拾ってくることが可能なのです。日化辞Webでは分子式やCAS番号などからの検索も可能で、検索結果画面中「化学構造図」の項目にモルファイルダウンロードのボタンがあります。モルファイルは構造式のデータ交換のスタンダード形式の一つになっているので色々なところで提供されていたりするのです。

・日化辞Web
・Chemical Book

ちなみに以前書いた「天然にない官能基の話」でKijanimicinという天然物の構造を載せましたが、実はこれは上のサイトからモルファイルを落としてChemDraw上で表示させ、立体化学を付けたり角度とか調整してから画像化したものです。あんなめんどくさい多糖付き大環状化合物一から描いてられませんですわ(;´Д`)

で、そこから拾ってきたアザジラクチンのモルファイルをChemDrawで表示させたのがこちら↓

azadirachtin of molfile.jpg

官能基が結構かぶったり環の形が微妙だったりしますが、それは自前で好きなように調整すればよい話で、一から描くのに比べたら格段に手間が省けます。ちなみに巨大分子の代表格ともいえるポリエーテル類のものも用意されているので、これらの分子もあっというまにChemDraw上に出すことができますし、それ以外のソフトでも表示できるので、化合物紹介や画像化してwebにアップするのが大幅に楽になります。下の分子もモルファイルでの表示そのままです、所要時間1分以下!

カリビアンCTX.jpg

但し、これらのモルファイルは構造の正しさが別に保障されているわけでもないし、ファイルごとで分子の書き方や向きが異なります。向きとかはどうにでもなりますが、構造や絶対立体化学などはモルファイル表示で楽できた分、信頼できるソースと比較してちゃと構造をチェックしましょう。
実際、上で貼りつけたモルファイルまんまのアザジラクチン、結構間違ってます。気付きました?
(水酸基が足りない、アセチル基がない、tiglateの位置がおかしい等)


さて、確かにモルファイルはオンラインデータベースにあるものもありますが、そうそう全部あるわけでもありません。マニアックな化合物や最新分子は登録がまだされていないものも多いです。ですが一部論文誌、特にNaure姉妹紙系という先端中の先端&一流研究を掲載しているところでも実はモルファイルは公開されています。Nature Chemistryにある2011年のTraunerらのLolineアルカロイドの全合成論文を例にとって紹介します。

論文のフルテキストをhtml表示させた場合、本文中に化合物番号がありそこにリンクが貼りつけられています(丸で囲んだところ)。論文誌を購読していない場合にはAbstractしか出てきませんが、その化合物番号がabstractにもあればそれにもリンクがついているので使えます。実際このTraunerの論文ではabstにも化合物番号があります。
Trauner Nature mol link1.jpg
http://www.nature.com/nchem/journal/v3/n7/full/nchem.1072.html
↑Nature ChemのLoline全合成論文のフルテキスト画面(購読してない場合にはアブストのみ)。
この化合物番号(丸で囲んだところ)のリンクをクリックすると・・・・

Trauner Nature mol link2.jpg

http://www.nature.com/nchem/journal/v3/n7/compound/nchem.1072_comp1.html
↑化合物毎のフルデータが(画像では切ってますが、下には分析データと実験項も)。一番右にmolfileのリンクがあります。
このように先端研究に登場する分子の構造式を簡単に入手することができます(モルファイルは論文誌を購読していなくても入手可能)。この手法は少なくともNature ChemとNature Chem Bioでできるのを確認していますが、Nature本誌ではダメな模様。

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追記(May/3/2013)
TetrahedronおよびTetrahedron LettersでもMolファイル提供はあるようです。
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一から化合物を描いてどうやったらきれいに描けるかを修行するのも重要ですが、こんな風に手を抜けるところを抜けるようにすれば他のめんどくさいことに余力を割けるようにできます。一度使ってみてはどうでしょうか。

化合物表記ファイル形式のもっと詳しい話はこちら
SDFって何?〜化合物の表記法〜 (Chem-Station)
(all links accessed, Apr/28/2013)
HGS 立体化学分子模型 アドバンストセット

丸善 2007-07-19
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posted by 樹 at 10:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 化学とネット・PC | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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