ウミウシいいよねウミウシ。カラフルでのっそりした感じが癒されます。あー水族館で一日過ごしたい(ぉ
通称ピカチュウと言われるウデフリツノザヤウミウシをはじめ種類もいろいろあって、というかありすぎて和名がかなり珍妙なものもあります。オシャレコンペイトウウミウシやらシンデレラウミウシやらエレガントヒオドシウミウシやら、なんだよエレガントにオシャレって。
中にはインターネットウミウシなんてのもいるんですが、いったいどこへんがインターネットなのかと小一時間問い詰めたい気分です(各リンク先2013/4/14 accessed)。
そんな最近人気のウミウシですが、個体数がかなり少ないこともあって飼育できる種が結構限定されたりします。特に食生活がかなり偏ってるやつが多く、特定の海藻・海綿しか食べないとかならまだしも、よくネットでかっこいいとか言われてるアオミノウミウシは猛毒クラゲのカツオノエボシやギンカクラゲなどが主食ですし、ウミウシのくせにウミウシが主食(しかも自分よりでかいやつ)っていうのもいて、事実上飼えないやつも多いのです。
自分よりでかいやつを丸のみって怖っ(((((( ;゚Д゚)))))
なかでも姿かたちからして独特なのがメリベウミウシの類。どんな形なのかというとまさにラッパ。フードみたいな口兼顔と、ちょうどラッパのピストン部分みたいな装飾品のついた体。そのフード状の口をくぱぁと開いたと思えばそれをガバーーッと投網のごとく地面にかぶせて獲物を閉じ込め食すというとんでもないヤツです。
実際どんなやつなのかは次の動画をご覧ください。
どうみてもエイリアンです、本当にありがとうございました。
これもでかい種類だと50cmとか行くらしいです。しかも体くねらせて海中泳げるんだからますます地球外生命体じみてる。これ子供のときホラー映画と合わせてみたらマジで夢にでるわ(;´Д`)
ちなみに体に生えてる突起は意外に脆く、刺激を受けると簡単に取れてしまうそうです。
という変な生き物ですが、このメリベウミウシの中にはいい匂いのする種類がいくつかいるそうで、日本に生息するムカデメリベ、ヤマトメリベなどは柑橘系の匂いがするそうです(関西地方のテレビ「探偵!ナイトスクープ」でたむけんが調査したことがあって、その中では『グレープフルーツのにおい』と紹介されていたそうな)。いったいどんな成分なのか気になるところですが、如何せん個体数が少ない上に揮発性の高い成分だったりするせいか、成分に関する報告はあまりないようです。
その数少ない報告としてMelibe Leonina(和名不明)のにおい成分の構造決定が存在します。これも果物の匂いがする種類で、ベルガモットの匂いと表現されることもあるそうな。まあオシャレ、
その匂いの正体はモノテルペンの2,6-dimethyl-5-heptenalという化合物。こいつも天敵に対する忌避物質と考えられていますが、残念ながら揮発性が高いせいで試験できなかったとの記述があります。また同時にこの化合物のカルボン酸も単離されていますが、これは特に活性は見られず、それの匂いに関する記述はありません。なお、この化合物は酢酸ユニットからのde novo生合成によって生産されている、つまり一からウミウシが作ってることが明らかになっています。
Degraded monoterpenes from the opisthobranch mollusc Melibe leonina
S.W. Ayer and R.J. Andersen
Cellular and Molecular Life Sciences
1983, 39(3), 255-256.
ところでこのにおい成分のアルデヒド、気づいた方もおられるかもしれませんが、実は試薬会社で市販されているような化合物で、天然物合成の原料にも用いられています。その別名をメロナール(melonal)と言い、その名の通りメロンの香りのする香料として、実際に香水などに用いられています。
というわけでこれだけ見ると
『柑橘系のにおいの元を調べたらメロンの匂いだったでござる』
という意味の分からないことになるのですが、匂いというのは非常に複雑で、幾つもの成分が絡み合い、またその混合比によって様々な香りになることから、トータルで柑橘系の匂いとして感じているだけかもしれません(もしかしたら他に柑橘系の匂い成分がいるのかもしれませんが)。超悪臭でおなじみのジメチルスルフィドも思いっきり薄めたら磯の香りになるわけですし、ひょっとしたらごく低濃度だとそういう風に感じるのかも?ちなみに最近『生マッシュルームとフライパンで焼いたマッシュルームの匂い成分の比較』なんていう論文が出てましたが、これも大幅に変化した成分はあるものの、検出された成分は数十にもおよんでいます。
余談ですがお香や香料会社、食品の会社にいる調香師はこういった成分の調合によって香りを自在にあやつるエキスパートなわけです。
Characterization of the Key Odorants in Pan-Fried White Mushrooms (Agaricus bisporus L.) by Means of Molecular Sensory Science:Comparison with the Raw Mushroom Tissue
Sonja Grosshauser and Peter Schieberle
J. Agric. Food Chem. DOI:10.1021/jf4006752
と、2回にわたってお送りした(?)ウミウシの化学ですが、まだまだたくさんの化合物、タンパク質が見つかっていて、中には抗がん活性や抗HIV活性を持った物も。下等動物扱いされている彼等がそのうち病気の救世主になる日も来るかもしれません。
だから海で見つけてもいじめないでね(´・ω・`)
いじめる悪い子には巨大メリベウミウシが襲い掛かるぞー(「・ω・)「 がおー
ウミウシ類の防御物質に関する総説
Defensive strategies of Cladobranchia (Gastropoda, Opisthobranchia)
Annika Putz , Gabriele M. Konig and Heike Wagele
Nat. Prod. Rep., 2010,27, 1386-1402
その他ウミウシ様のすごい機能
・ソーラーパワード・ウミウシさん(Blog未来館のひと)
・ウミウシの“使い捨て”ペ〇ス(サイエンスポータル編集ニュース)
(2013/4/17accessed)
2013/4/17またタイトル変えたよもう(;´Д`)