それはそれとして、蜘蛛の糸と言えばすぐに思い浮かべるのが
・頑丈
・ネバネバ
・カンダタ
でしょう(最後なんか違う
実際蜘蛛の糸を強固な素材として実際に利用しようとする話もあります。その辺はChemStationさんでも話題に出てますのでここではスルー。
今回は頑丈さとネバネバ以外の話。
(※クモの写真は載せてないのでご安心ください)
クモの巣はどういう構成になっているかというと、地上など巣の足場となる場所と場所を結ぶ縦糸と獲物を捕獲するのに使う横糸からなっており、ネバネバするのは横糸のみです。縦糸はクモ自身が移動するように粘着性はありません。危険が迫った時には縦糸を伝って巣から足場(木など)に避難します。
というとまあ普通によくできた住まい位にしか思いませんが、よーく考えてみると外部と接続している縦糸に粘着性がないということはクモが逃げ出せるだけでなく、余所からの侵入者もそこからやって来れるということに他なりません。とはいうものの所詮クモの糸一本ですから余りに大きいのはやってこれないわけですが、アリのような小さい生き物であれば容易に巣に侵入出来てしまいます。
アリぐらい大したこと・・・と思うかもしれませんが一匹でもかなりの怪力な上に、絵にかいたような数の暴力で襲いかかってくるアリは小動物にとって極めて脅威です。極端な例で言えばサスライアリなどは集団での大行軍を行い、昆虫から牛に至るまで襲いかかって餌にしてしまったりと、小さいからと言って侮れない生き物です。
しかしクモの巣にアリがびっしり、といった光景はそう見ません。その理由の一つとなる論文がこちら。
1) A novel property of spider silk: chemical defence against ants
Li, D. et al. Proc. R. Soc. B 2011 online
DOI:10.1098/rspb.2011.2193
2) Why Are Ants Rarely Seen on the Webs of Spiders?
(Chemistry Views)
ジョロウグモの一種から、特定のアリ3種に対する忌避物質を単離したというもので、見つかった物質というのが2-pyrrolidinone、あら単純。しかしこの2-pyrrolidinone、多くのアリが危険を知らせるフェロモンとして採用している物質でもあります。つまりこれを塗っておけばアリが危険と判断してやってこない、というわけです。
クモの糸はねばねばしてるとか頑丈とかいうイメージですが、こういう天敵の忌避物質もちゃんとぬってあるんですね、よく出来たもんです。なお面白いことに、この物質は子グモからは検出されないそうです。危険じゃん!と思うところですが、子グモの糸だと細すぎてそもそもアリが渡ってこれないとのこと。うーん、ますます良く出来てる。
ちなみに全てのクモからこれが出てくるかというとそんなことはないので、種類によって別の物質を用いているのかそれとも何かまた別の理由があるのか、まだまだ謎の部分は多いです。
単純な物質なので生産しやすそうですし。
結構効果のあるアリが限られるみたいなので汎用性となると厳しいかもしれません。大量生産可能な点ではかなり優れているので何かしらの虫に対して使ったら案外効くやつもでてくるかも?