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2011年11月06日

エステルだけに求核反応させる話 その2

カルボニルに対する求核反応は有機化学の中でも基本的であり、且つ立体選択的合成、増炭反応としてとても重要です。その求核剤の反応性はカルボニル化合物の中でも以下のようになっており、アミド・エステルが低く、アルデヒドが最も反応しやすくなっています。この基本的な序列は合成戦略を組み立てる上で極めて重要ではありますが、実際に基質が官能基で一杯になってくるとこの序列のせいで困ったことになることもしばしば。

01.jpg





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そんな序列を逆転させてしまう方法を以前紹介しました。Colbyらの例では、Weinreb amideを利用し、ケトン・アルデヒドをin situで保護、エステルだけを選択的に反応させる手法を報告しています。またケトンvsアルデヒドでも、反応性の良いアルデヒドだけを系内で保護、ケトン選択的に反応させることも可能です。詳しい話や他の方法などのバックグラウンドは過去に挙げているのでそちらのエントリーをどうぞ。

過去記事:エステルだけを求核反応させる
Colby, D. A. et al.
Org. Lett.2010, 12 , 5588–5591
Dialkylaluminum N,O-Dimethylhydroxylamine Complex as a Reagent to Mask Reactive Carbonyl Groups in Situ from Nucleophiles
http://dx.doi.org/10.1021/ol102495v


05.jpg

と、そんな手法ですが、ケトンvsアルデヒドの場合となると比較的中程度の収率になってしまう場合が多いようですので、この手法はケトン・アルデヒドvsエステルの反応性を逆転させることに特化した反応と思われます。

そんななか最近報告されたのは特にケトンvsアルデヒドの反応性を逆転させる方法、つまりアルデヒド存在下、保護することなくケトン選択的に求核剤を高収率で作用させるという手法。

Reversing the Reactivity of Carbonyl Functions via Phosphonium Salts: Enantioselective Total Synthesis of (+)-Centrolobine
Fujioka, H. et al. ACIE Early View
DOI:10.1002/anie.201106046


その手法とはシリル系ルイス酸存在化ホスフィンを作用させるというもの。TMSOTfに加え、PPh3(TPP)を作用させることでアルデヒドを選択的にO,P-acetalへと変換、系内でアルデヒドをマスクしておき、そのすきにケトン・エステルを求核剤と反応させ、workupにて元のアルデヒドへと戻しています。TMSでなくてもTBSでも利用できるようですが、TMS以外だとNaHCO3程度では落ちてくれないため、元のアルデヒドに温和に戻すことのできるTMSOTfが採用されています。

fujioka carbonyl.jpg

TPPを用いた場合ではケトンにO,P-acetalがかからず、アルデヒド選択的に保護がかかりますが、TPPではなく求核性の高いPEt3へと変更することでケトンにもO,P-acetalがかけられるようになります。これにより、ケトンvsエステルでもエステルを選択的に反応させることが可能となります。還元剤だけでなく、Grignard試薬などのアルキル化剤でも適用が可能です。

fujioka reaction.jpg

さらにこの手法を利用した天然物の不斉全合成も行われており、centrolobineの全合成では、ケトアルデヒドの系内でのアルデヒド選択的保護に続くCBS還元によって光学活性ラクトールへと導いており、応用性の高さが示されています。

fujioka synthesis centrolobine.jpg

反応性が自由自在に操れるようになってくると合成上での障害も取り払われ、より高い自由度での有機合成が可能になることから、先のColbyらの例も含め、とても重要な反応ではないでしょうか。個人的にこういう反応は大好きです。
by カエレバ

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posted by 樹 at 10:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 酸化還元反応 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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