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2011年09月27日

きたないお金の話

とは言っても賄賂だとか袖の下だとかそういう話ではありません、本当の汚れの話。

お金は多くの不特定多数が触れるものですから見た目きれいでも何がついているかわかりません。なので、手袋をして取り扱うとかお釣りを渡す際もレシートガード(レシートを先に渡してその上にお釣りの小銭をおく)といった配慮(過剰反応?)もされていますが、そのお金の汚れの中のとある成分に関する論文が発表され、一部で話題となっています。

お札.jpg



その成分とはビスフェノールA (BPA)、過去環境ホルモンとして話題になった成分で一部の国では法的にも規制がかかっていますが、一方で実際には健康への影響はさほどではないという研究結果も出ていたりと、現在もその影響については意見の分かれる物質でもあります。

bisphenol.jpg


そのビスフェノールA (BPA)が紙幣、それも世界各国のものから検出されたという論文が発表されました。

High Levels of Bisphenol A in Paper Currencies from Several Countries, and Implications for Dermal Exposure
Chunyang Liao and Kurunthachalam Kannan
Environ. Sci. Technol., 2011, 45 (16), pp 6761–6768


USA、カナダ、ユーロ、チェコ、ロシア、トルコ、オーストラリア、ブラジル、エジプト、南アフリカ、中国、インド、日本、韓国、クウェート、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、UAEの紙幣を(主にアメリカ、日本、韓国の国際空港の両替所で)入手、BPAの量を測定したところ、殆どの国の紙幣からBPAが検出され、中でもチェコ、ブラジルのBPA量がダントツに高いと判明、逆にトルコ、エジプト、タイ等では検出されはするものの極めて微量という結果が得られたそうです。ちなみに日本もかなり少ない部類で、中国・韓国の1/5~1/6程度でした。

(;`ハ´) アイヤー <;`Д´> アイゴー

彼らはBPAが紙幣から検出される原因を「紙幣そのもの」ではなく「レシート(感熱紙)」ではないかとしており、実際にお札とレシートを密着させて24時間放置しておくと紙幣から検出されるBPA量が激増することが分かりました。BPAは顕色剤として感熱紙に利用されているため、財布の中でお札とくっつくことで移ってしまうということです。

と、この論文では

お札からBPAが! → レシートが原因っぽい!

という結論にしていますが、いかんせんネタがネタなので各所環境系、健康系ニュースサイトやらブログやらツイッターやらで結構取り上げられて、「紙幣から環境ホルモン!!」という一点のみでドーンとやってるところが多いようです(本当に論文読んでんのかと思うところも多いですが)。
例によって「我々は政府にだまされ云々」的なところもありましたが政府が騙してたかどうかは別として、そもそもBPAにだけ着目しているからこういう結果になってるのであって、お金は元々どこの誰がどんな風に扱ってきたかを考えたらBPAよりも得体の知れない汚れの方を気にした方がいいんじゃないかとも思うんですけど。

また、殆どのサイトが「世界中の紙幣156枚を調査」としていますが、実際に使った紙幣は「52枚」です(一枚の紙幣から3か所サンプリングしているためN=52×3=156)。
更に、各国均等に調査したわけではなく、日本やユーロ札、BPA高濃度を記録したチェコ・ブラジル、逆に極めて低かったトルコ・エジプト等はサンプリングに使われたのは一枚だけ(日本は千円札一枚)。一方で中国・韓国・マレーシア等は複数金額の紙幣や同額紙幣を複数枚サンプリングしたりと、サンプルの集め方が謎です。また、一部使われている「ピン札」に関しても実際には一度市場に流通しているものなので、厳密に分析レベルでのピン札とは言えない可能性があります(これは本文でもやんわり触れられている)。

(#`ハ´) これは不公平アル! <#`Д´> =3 プンスカ!

論文自体は国別に云々言った結論を出してるわけではありませんが、ここまでするんなら何かしらの考察を加えてから報告しないと高濃度を叩き出されたチェコやブラジルがかわいそうな気がします。逆にレシートのタイプやレシート文化の有無で国ごと紙幣のBPA濃度に傾向が見られるような結果が得られれば(文化的な意味で)面白いのではと思います。

以上、
お金を触ったら手を洗おう!!
という論文でした(あれ?

posted by 樹 at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 有機化学雑記 | 更新情報をチェックする
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