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2011年05月28日

有機分子のロミオとジュリエット

以前、天使-Angel-を冠した化合物の話をしました
下はその時例に出したangelic acid (英語だとエンジェリックアシッドでかっこいいのに、和名はアンゲリカ酸でショボーン)。

angelic acid.jpg

見た目が天使の羽っぽいなんて話もしましたが、これや以前ポストしたangelca lactoneなど以外にもangelを冠する天然物があり、angelmicin類もその一つです(clickで拡大)。

hibarimicin.jpg

抗がん作用を有する巨大なdimer化合物の様な天然物で、微妙に右と左の構造が異なっているのが合成するにあたってはいやらしい化合物。山梨-群馬の天女山で単離されたことからangelmicin(天女≒西洋でいう天使)と命名されたのではと思います、いいセンス。とは言っても和名になると結局アンゲルマイシン(アンゲルミシン)なので天使感がまるでないので残念な感じですけど。

なおangelmicinには別名(他のグループによって独立に単離されたため)があり、hibarimicin(ヒバリマイシン)と命名されています。このヒバリは鳥の「雲雀」ではなく、富山県小杉町戸破(←これで「ひばり」と読みます)で採取された放線菌から見つかったことに由来します。


このようにAngelなどの宗教、芸術に関係する名前を冠した天然物も多数存在するのですが、最近になってシェークスピアの名作「ロミオとジュリエット」にちなんだ名前の化合物が単離、報告されました。その名もロミオブルー(Romeo blue)に、ジュリエットブルー(Juliet blue)!!


romeo and juliet.jpg

イタリアのヴェローナで単離されたこの二つの化合物は青色色素であり、このヴェローナが「ロミオとジュリエット」の舞台であることから名づけられた新規色素化合物です。なんてろまんちっく! ( *´ω`)

キノリン誘導体が3量化したような化合物で見た目は殆ど同じですが左側の環の不飽和度が異なっており、ジュリエットがジヒドロ化されたものがロミオというわけです。よって、かの有名なセリフ

『おおロミオ、どうしてあなたはロミオなの?』

という返答に困る問いかけに対して

『ジヒドロ化されているからさ、ジュリエット!』

という理系的マジレスを返すことができるわけです

まあこの後ジュリエットの機嫌が悪くなるのは目に見えてますがw

それはさておきこの化合物、名前の響きとは裏腹にこの青色色素の単離構造決定に至るまでの経緯は全くもって美しくもロマンチックでもなく、むしろドロドロしているのです。

そもそもこの「ロミオとジュリエット」が一体どこから単離されたのかというと、なんと「原始時代の石器の表面」!ということは青色の石器を原始人が使っていたのか!とお思いでしょうが、至って普通の、見た目が灰色の石器です。いや、
灰 色「で し た」、元 々 は。

その経緯は次の通り。これらの石器は元々美術館の保管庫として使用していた古城にしまわれていたのですが、資金ねん出のためこの古城を売却することに。そこで一時的に軍の兵器庫に保管しておくことになりました。が、
武器庫に移された後しばらくしたある日、石器をチェックすると・・・


ちょwwwなんか石器青くなってるwww
なんてこったい/(^o^)\


と、なんでもなかった石器が青色に変色していた(しかもかなりの数!)のが発見されて大騒ぎ。青色を取り除こうにもなんだか正体もわからないし、取り除いたら取り除いたで表面部分の分析が出来なくなって歴史的価値が失われることになる、特にこのヴェローナの石器はネアンデルタール人の移住・移動を探る重要な鍵となるかもしれないものなだけにその影響は重大。なんでこうなったのか、だれが責任とるんだという政治的問題にまで発展したのです。

と、そういう経緯でこの青色成分を分析した結果が先のロミオとジュリエットの青色(実際にはもう一つ、「flint blue」という類似の構造を持った新規色素も単離されています)だったというわけです。これでめでたしめでたし・・・・

とは行きません。金属化合物でなかったということは大きいですが、そもそもなんでこんなものが出来たのかという原因の特定には全く至っていません。鉄が合成を促進させている、だとすればその鉄は武器庫由来なのか、いや微生物が作っている等々。重要な歴史遺産に絡んだ大問題なだけに、「成分がわかりました!」では終幕というわけには行かず、この謎に満ちた騒動はまだまだ続いてしまうようです。

なお、青くなってしまった石器は「アバター・フリント」とあだ名が付けられているそうです、もちろんあの青い人がいっぱい出てくる映画にちなんだ名前です。

と、「ジュリエットからの手紙」って映画の日本公開に合わせたようなネタがあったのでポスト。いや、映画見てないけど。

元論文を含むromeo blue, juliet blueの経緯のreference↓
ref 2と3には実際に青くなった石器の写真と青色色素 in NMRチューブの写真あり。
1) Ancient Italian artefacts get the blues
Nature 466, 306-307 (2010)

2) The mystery of the discolored flints. New molecules turn prehistoric lithic artifacts blue
Artioli, G. et al.
Anal. Bioanal. Chem. 2011, 399, 2389-2393.



posted by 樹 at 02:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 化合物・反応お名前 | 更新情報をチェックする
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