シーフード大好き日本人。特に私は貝類には目がないのですが、貝と言えば貝毒(その流れはおかしい)。取る時期によっては毒をため込んでいたり、そうでなくても貝に当たることも良くあること。大体はシガトキシン、ブレベトキシンのようなポリエーテル系化合物、サキシトキシン類、ドウモイ酸、スルガトキシン等だったりしますが、この手の毒分子は貝自身が生産しているのではなく渦鞭毛藻などによるもので、それらを貝が摂取・思い切り濃縮した結果である場合がほとんどです。ちなみにスルガトキシンの場合、それ自体は無毒で、プロスルガトキシン、ネオスルガトキシンが活性本体であるとされています。

しかし、中には貝自身が毒を生産しているものも当然いて、有名なのはアンボイナガイなどイモガイのコノトキシン。この貝は貝のくせに生きている魚を銛のような毒針でハンティングして食すというすごいやつ。人間もこいつにやられると数時間で死亡してしまうレベルの猛毒です、しかも血清なし。ちなみにコノトキシンはたんぱく質より成る化合物です。
と、そこまで酷い毒を持たなくても中毒を起こすような毒を持っている貝もいます。それも食用と知られているメジャーな貝で。自分でさばいたりしない限り知らない場合が多いですが、ツブ貝もその一つ。

↑貝の写真を見ると「ああこれか」と思う人もいるかもしれません。海産物通販などでもお目にかかる美味な貝ですが、これが実は毒持ちなのです。その毒成分は一般名「テトラミン」。

殺鼠剤にもテトラミンと名のつくものはありますが別物で、正式な名前はtetramethylammonium salt、4級のアンモニウム塩です。とまあ、こんなブログで毒というからなんか窒素だらけのえげつない構造してるんだろと想像した方、残念でしたw
しかしこんな成りでも毒は毒。ツブ貝はこれを唾液腺に大量に貯蔵しており、捌く際にこいつを取り除いてしっかり水洗いしないといけません。これを怠ると↓こんな風になってしまいます。
① [まめ速]昨夜、貝食って家族全員が幻覚症状に陥ったwwwwww
② 食中毒への道
上記のように、その中毒症状は酩酊、視覚異常、ふらつき、頭痛、めまい、吐き気といったもので、いわゆる「貝にあたる」的な症状とは別です。基本的には数時間で回復するので死にはしないそうです。構造式を見ればわかるとは思いますが熱をかけた程度で分解するようなものではないのでしっかり取り除いておきましょう。ツブ貝を丸のまま購入する際には店の人から注意があるはずなので言うことはちゃんと聞くように。
しかし『酩酊』って書くとどうしても「手軽に酔えるんか!」とかいう印象を持たせるんじゃないかと思ってしまうのは僕だけでしょうか。実際いい感じに酔えるんなら今頃ツブ貝に何かしらの規制がかかってるわけですからそんなことはないんですけどね。
関係ないですが、「酩酊」というと自民党の故・中川昭一氏の酩酊会見を思い出してしまう管理人。この会見の直前に記者と会食していて、このとき飲んだワインを「ごっくん」したのが酔っぱらった原因だといわれていますが酔っぱらうにしては異常な会見でした。この時の食事の内容は明らかになっていないので完全な憶測ですが、まさかこれだったりしないよな・・・・・?とか思いながら書いたりしてました。まさか、ね。
Reference
1) ツブ貝毒(PDF注意) from 財団法人 日本中毒情報センター
2) バイ貝によるテトラミン食中毒の予防 from 滋賀県HP