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2011年03月13日

スズアセタールが要らない1,2-diolの選択的アシル化

1,2-ジオールの選択的修飾反応と言えば以前ポストしたようにスズアセタールを用いた手法がメジャーです。とは言うものの有機スズ試薬と言えば相当な有害物質で、廃試薬として出そうにも結構めんどくさいなど、積極的に使おう(特に大スケール)という気にはなかなかなれないものがあります。

今回紹介するのはスズを用いず、ホウ素を利用した1,2-diolの選択的アシル化法です。さようならスズアセタール!!


Borinic Acid-Catalyzed Regioselective Acylation of Carbohydrate Derivatives
Doris Lee and Mark S. Taylor*
JACS ASAP DOI:10.1021/ja110332r


今回使われているのはボリン酸(R2B-OH)で触媒的に使われています。元々ボロン酸エステルを用いた選択的アシル化というのは報告されていましたが、今回はその触媒化に成功しています。このボリン酸を使ったdiolのモノアシル化では環状エステルを経由するため、cis-diol選択的に反応が進行します。そして驚くべきことにスズアセタールを用いるよりも更に高い選択性が発現しています。トリフェニルボランが最も高い選択性となっていますが、これはprotonolysisによって系中でボリン酸エステルへと変化していると考えられています。本論文では手に入りやすさや安定性の都合から、ジフェニルボリン酸のエタノールアミンエステルを用いています。
boric acid.jpg

また前の報告にもありますが、ボリン酸だけでなく、塩基としての三級アミンが重要だそうです。実際の活性種はボロン酸エステルそのものではなく、4配位錯体となります(ボロン酸エステルは反応しない)。

boric acid 3.jpg


この反応は環状エステルを経由するため、6員環diolよりも環を組みやすい5,8員環の方が早く反応します。

boric acid1-5.jpg
応用例として各種環状ジオールや糖質への反応が示されています。いずれの場合も高い選択性と収率をマークしています。殆どがベンゾイル化ですが他のアシル基質での例もあり、無触媒の場合と比較してかなりの収率向上が見られています。ただ、反応基質は全て環状diolであるため鎖状diolの場合にどうなるかは未知数です。

boric acid 2.jpg


位置選択性ですが、DFT計算上ではプロトン親和性がequatrial酸素原子の方が高いということと立体障害の影響が理由として挙げられています。一方で環状エステルが開裂したもののエネルギーは、どちらの場合でも差がない(or殆どない、実験編参照)という結果が得られています。
boric acid 4.jpg

鎖状化合物はどうなるんだということに関しては未知数ですが、環境に優しい(というかスズをやらなくて済む)本手法、試してみてはいかがでしょうか。
posted by 樹 at 01:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 有機化学 | 更新情報をチェックする
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