スズアセタールが要らない1,2-diolの選択的アシル化: たゆたえども沈まず-有機化学あれこれ-
よくアクセスがあるものをまとめておきました。右バーのカテゴリ別も参照ください。

レポート・実験データ等のまとめ
・研究室に貼っておくと便利な表などをあつめてみた(現在も随時更新追加中)
・検索・計算に使える化学サイトをあつめてみた
・特殊記号の出し方・ショートカットキーまとめ
・MS WORDショートカットや特殊アルファベットの入力法まとめ
・Powerpointのショートカットキー
・出版社ごとのオープンアクセス化費用をまとめてみた(有機合成化学向け)
・ネットコンテンツを参考文献に挙げる話
・情報ソースはウィキペディア、な論文の話
・タダで読めるけど・・・-オープンジャーナルのあやしい世界
・最近のOLのはなし

材料化学・自然化学・疑似化学
・ボーイング787の窓の秘密とクロミック材料の話
・アメフラシの紫汁の謎
・タコが光ってもいいじゃなイカ!-青い毒タコ・ヒョウモンダコ科の秘密-
・やけど虫の毒と抗がん活性
・世界一大きい花の臭いの話
・竜の血の赤、虫の赤
・撤回された天然竜血分子が全合成で確かめられた話
・はじけるキャンディ・ドンパッチの話
・危険なDHMO? SDS(MSDS)の話
・水を脱水した話
・高校生が高価な薬分子を格安で作った、という話
・人工分子は天然に存在しないのか―抗がん剤分解物は妖精さんだった話―
・創薬分子が天然から採れた!!と思ったら・・・な話

有機合成化学実験
・Swern酸化の利点
・光延"反転"の話
・実験、爆発:やってはいけない組み合わせ
・モレキュラーシーブスは塩基か酸性か
・TBAFにモレシな話
・モレキュラーシーブスの乾燥法で収率が変わった話
・原料の不純物で反応が行ったり行かなかったりした話

大学講義の初級有機化学
・フィッシャー投影式をジグザグ式に変換する方法
・ニューマン投影式の理解の仕方
・R/S表記やE/Z表記など

2011年03月13日

スズアセタールが要らない1,2-diolの選択的アシル化

1,2-ジオールの選択的修飾反応と言えば以前ポストしたようにスズアセタールを用いた手法がメジャーです。とは言うものの有機スズ試薬と言えば相当な有害物質で、廃試薬として出そうにも結構めんどくさいなど、積極的に使おう(特に大スケール)という気にはなかなかなれないものがあります。

今回紹介するのはスズを用いず、ホウ素を利用した1,2-diolの選択的アシル化法です。さようならスズアセタール!!


Borinic Acid-Catalyzed Regioselective Acylation of Carbohydrate Derivatives
Doris Lee and Mark S. Taylor*
JACS ASAP DOI:10.1021/ja110332r


今回使われているのはボリン酸(R2B-OH)で触媒的に使われています。元々ボロン酸エステルを用いた選択的アシル化というのは報告されていましたが、今回はその触媒化に成功しています。このボリン酸を使ったdiolのモノアシル化では環状エステルを経由するため、cis-diol選択的に反応が進行します。そして驚くべきことにスズアセタールを用いるよりも更に高い選択性が発現しています。トリフェニルボランが最も高い選択性となっていますが、これはprotonolysisによって系中でボリン酸エステルへと変化していると考えられています。本論文では手に入りやすさや安定性の都合から、ジフェニルボリン酸のエタノールアミンエステルを用いています。
boric acid.jpg

また前の報告にもありますが、ボリン酸だけでなく、塩基としての三級アミンが重要だそうです。実際の活性種はボロン酸エステルそのものではなく、4配位錯体となります(ボロン酸エステルは反応しない)。

boric acid 3.jpg


この反応は環状エステルを経由するため、6員環diolよりも環を組みやすい5,8員環の方が早く反応します。

boric acid1-5.jpg
応用例として各種環状ジオールや糖質への反応が示されています。いずれの場合も高い選択性と収率をマークしています。殆どがベンゾイル化ですが他のアシル基質での例もあり、無触媒の場合と比較してかなりの収率向上が見られています。ただ、反応基質は全て環状diolであるため鎖状diolの場合にどうなるかは未知数です。

boric acid 2.jpg


位置選択性ですが、DFT計算上ではプロトン親和性がequatrial酸素原子の方が高いということと立体障害の影響が理由として挙げられています。一方で環状エステルが開裂したもののエネルギーは、どちらの場合でも差がない(or殆どない、実験編参照)という結果が得られています。
boric acid 4.jpg

鎖状化合物はどうなるんだということに関しては未知数ですが、環境に優しい(というかスズをやらなくて済む)本手法、試してみてはいかがでしょうか。
posted by 樹 at 01:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 有機化学 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック