前にも有機化合物の名前を紹介しましたが、オカダ酸にマンザミンなど、人の名前以上に豊富な名前が存在する(かぶっちゃだめだし)のでさまざまなものがあります。そんな中で今回はなんかゲームとか漫画とかに出てきそうな臭いのしそうな名前のものを集めてみました。
まずは天然物から、深淵・アビス(abyss)の名を冠するポリケチド型抗生物質アビッソマイシン(Abyssomicin)。複雑な格好をしていて上の環はアトロプ異性体も存在できるくらいにきつきつになっています。なんでアビスなんて名前が付いているかっていうと深海で取れたからでしょうね。実際単離も深海微生物からですし。
※追記------------------
他にもアビッシノン(Abyssinone)やアビッセニン(abyssenine)と言った天然物もあるようです。
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次は謎(enigma)という名の化合物、エニグマゾール(enigmazole)。クマの一種じゃないよ!なんで謎(enigma)なんて名前が付いているのか謎です。いやほんとは調べてないだけなんだけど(ぉ
(※追記 海綿の一種、Cinachyrella enigmaticaから取れたからのようです。じゃあなんで海綿の名前にenigmaが入ってるのかっていう話ですが、それは相変わらず不明。)
※追記------------------
Enigmaなんてちょっと小難しいこと言わないでそのまんまなお名前、その名もクェスチオマイシン(questiomycin)なんてのもいたりします。Answermycinとかはないんでしょうかね。
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そして中にはこんなのも。その名もAngelic acid!
「エンジェリックアシッド!!」とかなんか技でありそう、FAIRY TAILあたりで。
それにしてもエンジェリックアシッド、エンジェル酸、天使酸なんてずいぶんとロマンチックなお名前じゃないですか・:*:・(*´∀`*)
二つ並べるとまさに天使の羽っぽい感じでクリスマスあたりにカポー(※couple)向けに宣伝したったら流行りそう。天使酸マジ天使。
と、言いたいところですが、正式な和名はエンジェル酸でも天使酸でもなく、
「アンゲリカ酸」
と実にしょんぼりなお名前(´・ω・`)
まあアンゲリカ(アンゼリカ)種の植物から主に取れるから当然そういう名前になる(というかangelicというのもangelicaから来てるし)のはそうなんだけど、もうちょっと洒落聞かせてほしかったなあと思ったり(もっとも、angelicaの学名自体が「天使」に因んでいるので結局一周して天使の意味になるんですけど)。あと、二つ並べて天使の羽に見えるのは、アンゲリカ酸のE/Z異性体であるチグリン酸の方がそれっぽく見える気がします。
アンゲリカ酸自体はエステルとしてアロマテラピーにも使われるカモミールなどのアロマ抽出液にも含まれているそうです。なおさら「エンジェル酸含有!天使の香りを貴女に」みたいなあおりでやれば売上上がりそうですね。是非アロマ屋さんは試してみてください、嘘はついてないし。ただ、エンジェル酸なんて名前のものはないからこの辺で法律に引っ掛かりそうな気がすごいしますけど。「エンジェリックアシッドが含まれています」にしとけば問題ないかしらん?その辺はしーらないっと、自己責任自己責任。
ちなみに「天使 酸」でググってもangelic acidは出て来ず、ヒアルロン酸がらみの美容モノしか上がってきません。
他にもangelを冠した化合物としてアンゲリシン(angelicin)やアンゲリカラクトン(angelca lactone)という天然物もあります。
似たようなものでは「摂理」、「神意」、「神(最初を大文字にした場合)」というずいぶんと神々しい意味を持った単語"providence"を冠したプロヴィデンシン(providencin)という化合物もあります。フラン環、エポキシ化されたγラクトン、エキソメチレン+水酸基の生えた多置換シクロブタン環などかなり複雑な構造をしたフラノセンブラン型ジテルペンで、John Wood, Johann Mulzer, Dirk Traunerらを始めとしたグループが合成研究を行っていますが、今も全合成は達成されていません。(※プロヴィデンシア島から取れたからこういう名前のようです)
すごくどうでもいいんですが、「プロヴィデンス」というと聖闘士星矢ハーデス編のタナトスの必殺技を思い出してしまうのは僕だけですかね?(オサーン発見!)
ガンダムSEEDにプロヴィデンスガンダムってのもいたけど。
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2012 2/20追記
ゲームと言えばおなじみRPG、といえば龍と勇者。
こんな化合物もあるのです、ドラゴナミド!
まさにゲームにありそうな名前。
長ーい身体な感じがまさにドラゴン!(ぉ
実際にはdrago beachで取ってきたシアノバクテリアから見つかったからなのでドラゴンと関係ないのが残念。
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さて、天然物を外れると色々あるんですが、特にあんまり有機化学とかかわってない人から見ると「デス・マーチン試薬」はそういう臭いのする化学物質に思われているような気がします。「デス」って響きのせいでしょうけどね。ちなみに「デス」は「Daniel B. Dess」というお名前。「Death」じゃないよ!
あと個人的にはメルドラム酸はなんかドラクエにありそうな感じ。
他にも魔法-Magic-を冠したものもあり、マジック酸(magic acid)、マジックブレット(magic bullet、TCIの製品でFAB-MS用のマトリックス)、マジックメチル(magic methyl、Methyl fluorosulfonateの別名。ちなみにmagic acidとこれはGeorge Olahの発明品)などがあります。
これの中国語名が面白くて、順に
「魔酸」、「魔术子弹」、「魔幻甲基」
となります。もうRPGに出てきてもおかしくない感じ。特に魔幻甲基なんかからだに装備できそうです、レアアイテムかしらん?
ちなみに中国語での「甲」は炭素数を表しており、炭素1個分のことです。
他にも色々あると思いますが、これらの試薬を作ったりターゲットにする際には是非、
「くくく、この俺に魔幻甲基を使わせるのはお前が初めてだ・・・・、光栄に思いがいい!!」
みたいな邪気眼的行動に出ながら実験をするとまた一味違うかもしれませんね。周りからどういう目で見られるかは知りませんがw


ここ見て「あれ、弾丸ならバレットじゃないの?」と思ってリンク先見たら「マジックビュウレット」と書いてあって、「もしかして東京化成の人ビウレット反応と混同してる?」とか思ったんですが、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A0に
>ただし英単語 bullet は本来「ブリット」のように発音し、日本語に音写するにしても普通なら「ブレット」となるところ。「バレット」は一種の慣用読みということになる。
とあって、バレットというのは日本で定着してる書き方なんだと気づきました。
>ただ、エンジェル酸なんて名前のものはないからこの辺で法律に引っ掛かりそうな気がすごいしますけど。
どこかで目薬の箱に「涙の主成分ポタッシウム配合!」と書いてあったというネタを読んだことがあります。
カリウムも言い換えれば新薬みたいな響きになりますね。
マジックメチルは実はすごい猛毒だったりします。
白衣に数滴付着しただけで、しばらくして肺水腫で死亡した例があるとか。
ただホスゲンと同様に遅効性なので症状が出るまでに数時間掛かるので、RPGで「ポイズン」の代わりに「魔幻甲基」とか設定しても、1戦闘に何時間掛かってるんだという突込みが入りそうですが。
ちなみに硫黄とメチル基の間に酸素が入ってない化合物もあって、通称はフメットというそうですが、こちらもマジックメチルに負けず劣らずの猛毒だったりします。
ちなみに神経ガスのタブンは、中国語で「塔崩」という字を当てます。
国崩しとかコロニー落としみたいでなんかライトノベルに出てきそうなセンスですね。
まあ結局はメチル化剤ですからねえ。
それにしてもそんな猛毒だとは、メチル水銀の話思いだしました。
Bulletはブレットと発音した方が近いですね、バレットは日本語でしかみないです。
>「塔崩」
パイルドライバーか何かですか?(違