有機化学を初めて最初の難関はFischer投影式の変換でしょう。Fischer図とは魚の背骨見たいな構造式の書き方で、主鎖の中で酸化度が最も高い官能基を上に持ってくるルールがあります。一方ジグザグ式はその名の通り、主鎖をジグザグに横にのばしていくタイプ。有機化学の試験で「Fischer式をジグザグ式に直せ」という問題は鉄板と言えます。それだけ分子や骨格の立体認識を確実にするためにも重要なことなのです。

ではFischer式からどうすれば楽に変換できるでしょうか。そのためには炭素原子がどういう形で結合を伸ばしているかを頭に叩き込んでおく必要があります。炭素原子(sp3炭素)は正四面体型になるように4つの結合を伸ばしています。この形をFischer式のルールで書くと、横に出ている二つの結合は紙面手前、縦の結合は紙面裏に出ていることになります。

これをもう一つ炭素鎖が伸びたもので見てみると、図のようになります。

このようにFischer式での形では、主鎖が紙面手前に向かって盛り上がっている、猫背見たいな格好になっているのが分かります(Fischer式の図を左から見たものを書いてみるとよくわかります)。
では更に長いものになるとどうすればいいのか。ここではD-glucoseを例に見てみましょう。Fischer式ではそれこそ魚の背骨っぽい感じが出てくる位長くなってますが、やることは同じ。Fischer式の縦軸は紙面手前に向かって盛り上がっている山なわけですから、それを左から覗いてやった形に書きなおすと図のようなものになります。

こうして真っ平らな感じのFischer式からクサビの付いた立体っぽい構造式へと変換したら、後はそれをジグザグに直すだけ。と言ってもここの作業で立体化学を間違えてしまうことが多々ある他、頭の中で色々ねじった結果、わけがわからなくなるなどと言ったこともあるでしょう。それを防ぐためには、特定の炭素の部分だけ変えればよいのです。つまり、ジグザグの上(または下)の山に既になっている部分は固定し、そうなっていない部分の官能基の向きをひっくり返せばよいのです。その際、手前に来ていた官能基はひっくり返した後では後ろ側に向いていることに注意してください。

こうして向きを直していきます。下図では奇数番号の炭素をひっくり返しています。
これでFischer投影図からジグザグへの変換はおしまいです。(clickで拡大)

さて、Fischer式からの変換の際に「左から見る」としましたが、これにも理由があります。特に糖のFischer式を変換する際には左から見た図を書いておいた方が便利なのです。つまり、左から見た図を下図の要領で変換するだけで、糖の書き方のルールに則った(こう書かないとテスト的にもバツを食らうし教授がキレます)6員環型の糖構造へと容易に変換することが可能なのです。ちなみに6員環から上下に官能基が出ている形をHaworth式と言います。(clickで拡大)

こうしておけばいちいち頭の中で炭素鎖をねじらなくても簡単に変換できます。でも一番重要なのはsp3炭素原子の手の出し方が正四面体方向であるということを認識しておくことにあります。こうやって空間的な認識を持っておけば、複雑な分子になっても大体の構造が頭の中で思い浮かべられるようになるからです。一番いいのは分子模型をいじくりたおすことなんですが・・・まああれ高いんですよね。
関連エントリ
・ニューマン投影式の理解の仕方
・R/S表記やE/Z表記など
・糖(アルドヘキソース)の覚え方
このページが一番フィッシャー投影式がわかりやすいです♪
ありがとうございます、そういってもらえると作った甲斐があったってもんです。
そういってもらえると書いた甲斐があります。期末試験シーズンですねえ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:D-glucose-chain-3D-balls.png
と
http://orgchemical.up.n.seesaa.net/orgchemical/image/E7B3963.jpg?d=a0
を見比べると異なるように見えてしまうのですが、どうしたらいいんでしょうか。