2017年11月15日

出ないはずの?エノラートの話 その1:Bridgehead enolates

カルボニルは有機合成でも基本にして重要な化学であり、そのなかでもケト・エノール互変異性の話は必ず頭の中に入れておかないといけない話です。通常のカルボニルはケトンでもアルデヒドでもエノール型は不安定でケト型を取っています。そんなカルボニルに塩基を作用させると、カルボニル部位とのケト・エノール互変異性ならびに立体電子効果によって酸性度の上がったα位の水素が引き抜かれ、エノラートが発生します。エノラートは炭素にアニオンが局在したケト型カルバニオンとOに負電荷が局在したいわゆるエノラート型の2つの状態の共鳴構造によって負電荷が非局在化することで安定化しており、炭素―炭素結合形成反応として最も基本的な反応のひとつであるアルドール反応に重要な反応活性種です。
ところで関係ないけどカルバニオンなの?カルボアニオンなの?最近後者の方よく見る気がするけど(なお英語だと"カーブアナイオン")。今回は管理者権限によりカルバニオンに統一します(ぉ

enolate 00 基礎.jpg

しかしエノラートもなんでも出せるわけではなく、分子の構造などによってはその発生が困難な場合も存在します。そんななかで、はた目には「え、そんなとこエノラート出せないでしょ?」となるような場所でエノラートを発生させて合成に利用した例を紹介します。

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posted by 樹 at 11:00 | Comment(0) | 有機化学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月10日

論文の訂正通知は本文PDFにくっつけといてくれませんかね

いやもうタイトルまんまです。なんでバラバラやねんと。
そんな話を各社の対応含めて。


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posted by 樹 at 10:00 | Comment(0) | 有機化学雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月01日

アリル位のC(sp3)-H酸化とC(sp2)の酸化の話

もうC-H activation(functionalization)が流行ってからだいぶ経ちますが、そもそもの大元のC-H官能基化はアリル位やベンジル位C-Hの酸化反応から始まっています。その理由は、お隣のオレフィンのπ軌道との相互作用によってたんなるC-Hであるはずが軌道相互作用のおかげで普通のアルキルC-Hよりも活性化を受けており、官能基化が容易であるためです。だからこそ何の活性化も受けていないC-H部位の官能基化が高難易度であり、現在も1研究分野として注目されており、界隈ではノーベル化学賞ワクテカってなっとるわけです。個人的にはまだまだ先だと思いますけどね、理由としてはここ2,30年の合成化学での受賞は大半工業化されてナンボな感じだからなので(だからこそ某アメリカにいるモジャってる人は工業的応用を推進していると予想)。←あ、完全にフラグなので発表後にプギャーしていいですよ

とまあそんなC-H官能基化の最新のものをまとめても面白くないので(何)、超古典であるアリル位sp3炭素のC-H酸化と、オレフィン側sp2炭素を参加してアリルアルコール類へと変換する反応について最近のものを含めておさらいしてみようかと思います。

ちなみにアリル位のC-H酸化反応の天然物合成への応用については総説があるのでそちらもご覧ください。

Allylic Oxidations in Natural Product Synthesis
A. Nakamura, M. Nakada
Synthesis 2013, 45, 1421-1451

allylicOxTop.jpg
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posted by 樹 at 00:28 | Comment(0) | 基礎有機化学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月01日

撤回された天然竜血分子が全合成で確かめられた話

論文の取り下げについては某ありまぁす細胞の件でずいぶんと世間にも知られるようになりましたが、著者が訴える説の根幹が致命的に揺らぐ場合、↑のようなデータねつ造だけでなく、データの誤解釈や過大評価、再現性皆無、実はまったく違う因子もしくはコンタミが原因だったといった場合でも、retraction(撤回)という形で論文そのものが「なかったこと」になります。

ただし「なかったこと」と言っても全く歴史上から消されるわけではなく論文そのものは存在し、それが『撤回』されたという形で存在し続けます。ある種晒し上げですな。なので、論文そのものはなかったことになりますが発表されたこと自体は存在し続けるので、こうした論文が撤回後も引用されることはよくあることです(m9(^Д^)プギャーっていう引用もあるけど)。もちろんそれを根拠にして再現性を確認して復活することもたまにあるわけですが、そもそもその事実自体が撤回されているので、それの真偽や再確認についての話はあっても、「撤回された論文の内容を前提とした研究」というのはなかなかありません。てかそんなのありなの?

そんな話が最近現れたので紹介することにします。

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posted by 樹 at 10:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 化合物・反応お名前 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする